実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/12/03 (土) 14:00
座席1階
英国の作家チャールズ・ディケンズの名作で、あちこちで上演されている。「この世に生きる価値のない人などいない。それは、人は誰でも、誰かの重荷を軽くしてあげることができるからだ」という名言を残したと言われる。この作品は、頑固で偏屈で金にあざとい老人スクルージが聖霊の導きで変わっていくという物語で、この格言を地で行く舞台だ。
12月の上演にぴったりの演目。客席も親子連れがいたりして、少し華やいだ雰囲気。クリスマスソングが何度も歌われ、客席を引っ張っていく。
この意地悪で強欲なスクルージおじさんのような人は今でもいるだろう。そんな人の性格を果たして変えることができるのだろうか。現実社会ではなかなか難しいかもしれない。「聖霊の力じゃないと無理かなあ」と舞台を見ながら思ったりする。
しかし、このような性格は生まれ持ってきたわけじゃない。そうなる人生の経緯があるわけで、そのあたりも舞台で描かれる。ディケンズが言うように、その重荷を軽くできる人が近くにいたなら、と思う。スクルージは墓石に自らの名前が刻まれたのを見て震えあがるが、一歩間違えば強欲老人のままで生涯を終えてしまうぎりぎりのところで救われる。救うのはキリスト教的世界観だが、宗教と離れた世界でも「重荷を軽く」できる周囲の人が一人でもいたなら。劇団昴には、「重荷を軽くする人」を主人公にした現代版クリスマス・キャロルの物語を舞台でやってほしい。