少女罰葬 公演情報 劇団亜劇「少女罰葬」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「罰葬」という言葉が何を表すのか、それが物語の肝になっている。そのまま解釈すると、犯した罪〈罰〉を葬ることになるが、描かれている内容からするとニュアンスは違う。少しネタバレするが、表層的には訳ありな全寮制の女子高イメージであるが、ここは異世界である。舞台美術は怪しげな雰囲気を醸し出し、物語の概観を表している。
    ラストの解釈は 観客に委ねたかのようで、受け止め方によって印象が異なるかもしれない。同時に気になることも…。
    (上演時間1時間40分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術…剝き出しの鋼板のようなものを幾何学的に張り合わせた壁、それによって廃墟イメージを作り上げる。全体は黒色で、中央部分だけが赤く塗られている。黒いパイプ椅子が数脚。舞台と客席の間に血塗られたようなシーツがライトに被せられている。照明は薄暗く、その中を物語で重要な役割を果たす小道具ーランタンの灯が妖しく光る。

    学舎〈オールドスクール〉のような場所に生徒4人スカーレット(真田うるはサン)、タニア(奏愛サン)、オレン(種村愛サン)、ルイ(岡本尚子サン)と女教師1人(関口秀美サン)、そこへ新たに生徒1人が加わり、「アカリ」(長月翠サン)と命名される。ここに居る者は、黒い修道服のような衣装、そして夫々の回想シーンで現れる人物は白衣装と独特な動きで 場景の違いを表す。「罰葬」は夫々が犯した罪に対する贖罪かと思っていたが、実は真に自分自身と向き合うことが出来ず、「業<ごう>」に縛られたままの閉じられた世界にいることを指している。人は自分の醜態や醜聞を認めず、言い訳と逃げることで不自由な世界で生きている。それは異世界へ行っても同様、そんな心の彷徨を描いている。あかりが照らすランタン、その不思議な力で生徒たちの苦悩を強制的に浄化させる。心の解放がかなった時に永遠の安らぎが得られる。リトルシスターと呼ばれる不可思議な存在が噎び泣き、穏やかな光が射す。そう、アカリが現れるまでは堂々巡りの旅路、死ぬことすら出来なかった。

    冒頭は、女子高生の あるある会話、血塗られたシーツというアンバランスな感じがしたが、授業と称した回想シーンによって異様な世界へ誘われる。同時に一人ひとりが この場所にいる期間が違うといった台詞から 時間という概念が存在しないループする異世界を表す。人(アカリ)は海から生まれて…ラストは もう一人、言葉を発しなくなった生徒ルイと海を待つような呟き。そこに赦しがあったのか否か…それは観客が思い描いた胸の内にあると。

    気になるのはラストシーンではなく、導入部である。ここに居る者は、どうして ここに来ることになったのか?「何故」という起こりの説明がない。回想シーン…共通しているのは、犯した行為に対して、自分は悪くない 自分のせいではないと思っていること。その思い(念)が強い者が、この「罰葬」を受けることになるのだろうか?さすがにこの世界観への入り口は想像できない。原因・理由で謎を深め、本編で解き明かす、その過程を描くことによって物語の印象度も違うと思うのだが…。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/12/02 16:34

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