ぼくらが非情の大河をくだる時~新宿薔薇戦争~ 公演情報 オフィス3〇〇「ぼくらが非情の大河をくだる時~新宿薔薇戦争~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「楽屋」以外の清水邦夫作品舞台を観たのは初めてかも・・。戯曲は短いのを二つばかり読んだが。
    このたびは渡辺作品でないオフィス3○○舞台、客演に岡森諦、シアタートップス、今や「安い」とさえ思う4000円の入場料で「当日キャンセル」狙いで観に行った。清水邦夫戯曲発見の機会になった。全共闘時代、ヘルメット姿がそこここに蠢き、詩人、兄、父の「敗北が判っているかのような」物語を取り巻くコロスとなる。苦悩と恍惚が同居する詩情はふるる劇では、キリストの受難と同じく肉体の破滅の中に復活を予見させる基調があり、この時代そのものへの鎮魂の響きがある。
    ゲイの発展場である新宿のとある公衆便所で、たむろする男たちを後景に(時に前景)、主人公の吐く台詞が個的な懊悩を超えて時代的広がりを持ち、渡辺えりの演出で現代にせり出して来る。
    何より渡辺氏が十代の頃「書店で読んで」「書き写して」心酔した戯曲、「いつかやりたい」との念願を果たした舞台だからだろうか、想いに満ちて心地よかった。客席には渡辺氏の旧知の演劇人らがちらほらといった模様で、会場の雰囲気もよく、実はかなりの不眠状態で駆け付けたが寝落ちもせず終演を見る事ができた。

    ネタバレBOX

    開演前だったかトークの時だったか、渡辺えりが入場料について、5000円なら赤字回避できたが4000円にこだわった(小劇場だから)、と漏らしていた。話の文脈はお金ではなく、自分の「やりたい演目」を死ぬまでにやり残さないよう・・との由で、今回はその第一弾のよう。
    開演前に渡辺氏がパンフを売り歩くと次々に手が上り、どんどん売れていた。毎回オフィス3○○のパンフは凝っており、これも「1500円取っていい内容だ」と周りから進言されるが1000円にこだわっているとの言だが、この渡辺氏の選択を「経済」の観点から私は深く共感する。
    話は飛ぶが、企業経営において株主が最も「偉い」事の具体化として、企業の収益から応分の配当を「出すべきだ」との論理はヘソが茶を沸かす。「偉い」から金をもらえるのではなく、会社を支援する貢献者だから「偉い」のだ。彼らは「人や社会に投資する資金を持っている」主体として、人や社会の育成を支える栄誉に与れば良いのである。無論株の価値を下げる事は、経営側は仁義としてしてはならないと心して健全な経営に務める、そこには「意義」「目的」を共有する者の間の共闘関係がある、というのが一つのモデルである。お金は何か目的を遂げ、あるいは意味を生み出すための「手段」であり、企業とはその意味・目的に当たる。経済はお金という道具を通じながら実質的な何かを生み出して行く活動・運動だと捉えれば、「何かの時に」という言い訳で巨大な内部留保を従業員にも還元せずため込んでいる企業は、最早自分らかが何に貢献しようとしているかを見失った姿にしか映らない。まあその背景には見通しを切り開く事のない政府の歪んだ政策がありそうだが。

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    2022/11/19 00:03

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