オーガッタジャ! 公演情報 発条ロールシアター「オーガッタジャ!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    終演後、何人かが異口同音に 大人の演劇だ と話していた。そう言えば、説明にも「大人たちの 青春真っ只中な群像劇」と記していた。何が大人の演劇だか解らないが、廃墟という役目を終えた建物を通して、人生の応援を謳った、一見 矛盾した観せ方の物語だ。そこには発条ロールシアターらしい、硬派な中にも優しい思いが観て取れる。

    表層的には面白可笑しく描いているが、奥底にあるのは、諦念とは真逆の再生・再起と言った前向きな姿勢だ。滅びの美、ましてや頽落のダンディズムなんてこれっぽっちもない。あるのは男の それも中年男性の悲哀、それは仕事=生き甲斐、遣り甲斐を失(喪)った後の人生をどう生き残(遺)るかが…。
    (上演時間1時間30分 途中休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は暗幕で囲い、上手に何か隠されているような幕、下手に壁に見立てた衝立があり、その一部が簀子(窓枠)のような板が打ち付けられている。この暗がりが廃墟内であり、簀子を外して中へ侵入する。上演前から照明を諧調させ、闇に輝く外灯もしくは星空を表しているよう。実は暗幕の奥には紗幕がある。下手での会話は廃墟ビルの階数を説明しており、同じ舞台であるが空間の違いを表す。

    登場人物は、リストラ(クビに)された中年男・環が、廃墟ビルに忍び込んで一時的に寝泊りしようとしている。そこへ着物を着た〈男〉、一見どこかのご隠居のような飄々とした佇まいを醸し出ている。また廃墟マニア・白河清澄やフリーライター・西まごめ、そしてスリの一団…拝島・是政・美園が偶然に出会う。さらに ふらふらと侵入してきた男・津田沼と中年男・環が知り合いだった。廃墟という“不思議な力”によって集められたかのよう。訳ありの人々の人生模様を描きながら、この廃墟に現れる 霊 の話が交錯する。

    終盤は怒涛のような展開…廃墟ビルが建つ近くに江戸時代の刑場跡がある。着物姿の〈男〉、実は斬首の役人・山田浅右衛門であり、明治時代になってその斬首刑が廃止になって、生活の糧を失う。会社を馘にされた男と斬首してた人の<クビ>繋がりが、過去と現在を結ぶ。実はふらふらと侵入してきた津田沼は、環を解雇した会社の社長である。社内で人望のあった環を解雇したことで 社員が次々に辞め、会社は倒産寸前の危機に瀕している。それぞれの人の人生模様に各人の思惑を絡め 味わい深い話になっていく。
    因みに、登場人物の名前は駅名だが、山手線のように知られた駅名ではない。そこに名も無き一般人…特別ではない人々を表している。

    スリの一団は、師匠と男女の弟子といった関係のよう。過去回想、美園の幼少期に師匠・拝島と会話する場面は、その立ち位置(向き合わない)で場景を描いているが、ここは想像力を膨らませないと分り難いだろう。スリだが、美園には仕事?をさせたくない。訳アリの人物ばかりだが、真の悪人は登場しない。廃墟という役に立たなくなった建物の中に、役に立たなくなった人々を集めるが、そこには やり直せるという強いメッセージが込められている。浅右衛門の余生は俳句短歌を詠でいたのだろうか。ラスト 紗幕の奥は大木であろうか、若しくは短冊の山かもしれない そんな余韻を残す。

    ラスト、ほんの僅かなシーンに〈女〉役で 則末チエさんが登場する。みすぼらしい着物姿で這いずるような姿、浅右衛門に腕をつかまれ、次のシーンでは斬首される。浅右衛門が最後に斬首した女という説明から、有名な 高橋お伝 ということが分る。一瞬のうちに憐憫を表す演技は見事だ。則末さんは悲哀だけだが、他の役者陣はコミカルに演じながらも、その奥底に滋味ある人柄を忍ばせている。初演は観ていないが、この公演でのキャストは見事な演技力であった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/11/06 06:09

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  • この度はご来場まことにありがとうございました。発条ロールシアター演出の則末です。
    舞台美術について、登場人物(とその名前)について、ストーリーについて、役者たちの芝居について、などなどどれも本当に嬉しいお言葉満載で。光栄に思います。
    特にストーリーについての考察が!伝わったらいいなあというところに言及していただき、またどう解釈したかを語っていただけて本当に嬉しいです。「諦念とは真逆の再生・再起と言った前向きな姿勢だ。滅びの美、ましてや頽落のダンディズムなんてこれっぽっちもない」とか、「廃墟という役に立たなくなった建物の中に、役に立たなくなった人々を集めるが、そこには やり直せるという強いメッセージ」とか。なんて嬉しい。あと10か所くらい抜粋したいです。
    そしてラストシーンについて。
    あれが短冊の山だったら…なんて、なんてステキなのでしょうか。本当に。

    観てきた!コメント、ありがとうございます。励みになります。

    2022/11/10 10:58

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