無神論 公演情報 表現集団 式日「無神論」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ㊗旗揚げ公演。その物語は観念的であるが、観せ方は激情型でインパクトがあった。特に演出・主演の新藤レイジ役(佐伯啓サン)が語りだすまでの沈黙、それは長く続く。そぅ言葉(台詞)を発しない前半と饒舌に語り、周りの人々(恋人やバンド仲間)との関係が明らかになる後半とでは劇風が違って観える。

    自分の死は正しかったのか、という問いかけのある説明は、レイジや彼に関わった人々の生き方が、「無神論」ならぬ「無神経」といった感じだ。けっして楽しい内容ではなく、後半部分は鬼気迫るもの。若さというエネルギーの発散というか発揮を急いだ、もっと言えば生き急ぎすぎという痛々しさが印象的だった。
    (上演時間1時間45分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術、中央にテーブル、その周りに箱型クッション、下手にカウンターが置かれている。誰かの部屋であり Barのような場所にもなる。全体的に薄暗く沈重な雰囲気が漂う。上演前の前説を葬儀における諸注意のように淡々と話す。雰囲気と話のギャップにクスッと笑いが…。

    物語は、レイジが高校時代の仲間とバンド活動をしていたが、自分(才能)の限界を知り始めた。いや、何度か劇中でレイジが言う「トゥエンティセブンクラブ」、天才ミュージシャンは27歳で死ぬ、それに憧れているかのような思考と行動でもある。解散を言い出すレイジ、一方 仲間はレイジの存在、その才能を拠り所にして生き 活動している。出会いは高校時代、仲間はそれぞれ無視されたり孤独といった人と関わることが苦手なタイプ。しかし音楽は好きで、その活動に興味を持っていた。レイジは、そんな彼ら彼女らを誘いバンド活動を始め、インディーズバンドとして人気を博した。が、次第にレイジの音楽への情熱が醒めたのか諦めなのか。頼り頼られといった関係が崩壊するが、そこに それぞれの自分勝手な思いを見る。
    彼を見限りたいが…。そして起こった悲劇、その真相を探る元刑事のバンド仲間への聞き取りがミステリーとしての面白さを加える。

    レイジの静かに吐露するような言葉、一方 バンド仲間は、それぞれの事情と思いを激しく悲痛な叫びとして表現する。その対比が人の生き様を端的に表す。何をどうしたい といった渇きと衝動を生々しく描いているが、どの人物も同じような表現方法(絶叫するような)、その画一的な観せ方が残念なところ。人それぞれ生き方が違うように、その苦悩なりを色々な表現で描いてほしかった。

    演出は、物語の奥底にある思い、それをストレートに伝えようとしている。例えば激情した言葉(台詞)は客席に向かって叫ぶ。見えない相手を観客に準えているようだ。また、Barのマスターやスタッフの存在が重い雰囲気を和らげる。前半は幽霊(魂だけ)のレイジ…佇み懊悩する姿、一方 生前の彼の思い出に浸るバンド仲間という死と生を感じさせる。一転、後半は 思い出(生前の記憶)のレイジを登場させ、過去と現在を紡ぐ。さらに元刑事の推理を上手く挿入し関心を惹く巧さ。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2022/10/02 16:00

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大