真っ赤なブルー 公演情報 U-33project「真っ赤なブルー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    二作品…どちらも若い女性の心象風景を描いた内容。本公演は、U-33projectの作 演出・結城ケン三氏とroute.©︎の作 演出・平安咲貴女史が互いの脚本を交換して演出をつけあうという企画。奇しくも同じような題材のように思えるが、テーマらしきものは事前に打ち合わせをしたのだろうか。

    物語として紡ぐには、少し難しいような独特の世界観を表現しようとする。そして何となくではあるが肯いてしまう、もしくは共感する、といった妙味を持つ作品。観せ方は共通しているところもあり、不思議と二作品が影響しあっている。例えば自分(主人公)と別の自分を対置させることによって、主観と客観の両面を巧く描けること。当日パンフに「真逆のようで似ている、似ているようで真逆な両団体をぶつける事で起こる科学反応」と記しているが、その目論見は成功したと思う。
    (上演時間1時間35分 転換5分)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、奥を一段高くし通路のようなところに切り板 木材を張り合わせて作ったオブジェのような飾り。壁にも同様のもの。そして幾つかの箱馬と同型の椅子があるだけのシンプルなセット。それぞれの上演前にタイトルにある赤またはブルーの照明で枝影を映し出す。妖しげな美しさが印象的だ。

    (上演順)
    《route.©️》
    『U』 作/結城ケン三  演出/平安咲貴

    主人公・佐藤正見〈まさみ〉は自分の意思というものがなく、すぐ他人に頼ってしまう、相談してその意見に従ってしまう、困ると嘘をついてしまう。そんな困ったちゃんである。そんな自分に別の正見A・B・C(3人)を登場させ、内面と対話するような客観的な観せ方。本人も含め4人は白い衣装で同一人物を表現している。先の 頼る、相談する、嘘をつくの場面を具体化するために、猫屋敷、苺谷ミルク、超在-チョウアルという人物を登場させる。こちらは外面という存在ゆえ、私服(浴衣含む)という外見上の違いを観せる。さらに黒衣装の人物が1人おり、冒頭 自分・正見とは反対の方(後ろ)を向いている。人生とは自分が主人公…といった哲学的な台詞があるが、この世界観は劇中劇という形を借りた自分探し、自分であり『U』=『you』でもある。ブルーな気分を妙味ある物語に仕上げている。

    《U-33project》
    『愚者の恒心』作/平安咲貴 演出/結城ケン三

    主人公・ペケは女子高生、そして影響を受けたのが真理恵ちゃんという赤いワンピースを着た女の子。それ以外の6人は白いブラウスに黒ズボンで統一。それは特定の人物ではなく、むしろ社会であり世間を(役名を?で)表しているよう。
    ペケは自分を「僕」と言い、何かと戦っている。女子高生が「私」ではなく「僕」、そこに性差に対する偏見や差別への嫌悪が見えてくる。あくまでそれは一例に過ぎない。「病(傷)んだ空気は美味しくない」という台詞に込められた思い、それが銃口(ゆび鉄砲)を向ける行為へ。しかし、描かれているのが満員電車内の不快感、クラス内の人間関係(苛め等)といった身近にある不満に鉄槌を下す。最低な感情(理不尽)を取り除いたら最高に気持ち良くなれるのか。理想の現実とは…。屋上で出会った少女 真理恵ちゃんとの ひと夏の寓話か。

    自分が求める完璧な世界、そのためには社会(世間)と対峙(退治)する。『U』と異なり動的な印象を受ける。それは白いウエストゴムを器用に変形させ、ドアや車両を形作ることで、空間的な広がりや違う場所/光景を見せる。また「?」達が倒れるたびに赤い紙吹雪、もちろん血しぶき(真っ赤)イメージが美しくもあり刺激的である。演出の違いが一目瞭然となる面白さ。

    ポップに憂いを描く、鬱々しさを可愛く描く、その科学反応は面白い内容であり、企画であった。次回公演も楽しみにしております。

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    2022/09/16 17:46

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