実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/05/27 (金) 14:00
そもそもこのGK最強リーグ戦2022なるものは、演目を始める前にジャンケンをして、勝ったほうが先方、後方、どちらかを決めることができるシステムが導入されていたり、まるでスポーツ大会のように演劇祭に参加している劇団同士が張り合ったりと、通常の演劇祭とは一線を画しており、極めて個性的で、特色のある演劇祭だった。
私は、2019年に観て以来、久しぶりの2回目だったが、相変わらず、会場の雰囲気自体が面白かった。
猿組「猿組式 白雪姫 〜女王と7人の妖精〜」という劇を先に観たが、タイトルにある通り、本来悪役のはずの女王の側に焦点を当てて話が進んでいき、女王の人間臭さやあからさまな白雪姫への嫉妬と、白雪姫を愛する心、しかし素直になれない女王の複雑な心情などが丁寧に描かれ、女王を必ずしも極悪非道な人物とはどうしても思えなくなった。
さらに、両親を第一次世界大戦で亡くし、戦火の中、幼くして孤児となった女王は親戚のところをたらい回しにされ、酷い虐待や無視を受け、どんどん心が蝕まれ、ひねくれて、嫉妬深く、自尊心が強く、見栄っ張りな女王になるまでの経緯が劇中導入され、個性豊かでアクの強い7人の小人と白雪姫とのやり取りや小人と女王とのやり取り、女王と真実の鏡との噛み合わないやり取り、アドリブや曝露ネタなどによって、徹底的に笑えて、全編を通して面白かったが、それと同時に戦争による傷の問題や虐待、ネグレクトの問題が作品に練り込まれており、深く考えさせられた。
女王を演じた役者橋本晏奈さんが、魔女な雰囲気の怖くて得体のしれない雰囲気と同時に、人間臭さや複雑な心情、コミカルな雰囲気をしっかりと、それでいてさり気なく使い分けて演じ切っていて、見事だった。
真実の鏡役の役者西川智宏さんは、小気味よく絶妙なトーク力と笑いのセンス、登場しただけで眼に焼き付けることができるほどのアクの強さといい、違和感と存在感を放ち、人を一瞬で笑わせる才能を感じた。
7人の妖精役の人たちは全体的に癖が強かったが、その中でも、居眠り役の井手知美さんは、ただ寝て、時々寝言を言ったり、伸びをしたり、アクビをしたりといった役どころにも関わらず、出てきただけで存在感を放ち、その身体の動作や少しの台詞を言っただけで、相当印象に残った。
猿組の後、休憩を挟んで、大和企画の「家族会議」を観た。一曲もふた癖もある家族たちが、話し合う中で浮かび上がってくる祖父清作に隠し子がいたこと、長男清一が厳しく、威圧的で保守的になってしまった経緯が語られ、売れない小説家の次男清次郎が、実は大きな借金をしていることなどが次々に明るみに出て、家族が赤裸々にトークするのを観ていて、そのシュールさや、しつこいネタ、コミカルな場面が展開されていて、大いに笑い、非常に面白かったが、家族会議という当人たちにとっては重要なものであっても、それを劇化してみて、それを客観的に観てみると、いかにくだらなく、バカバカしくつまらない事にこだわって、会議が先に進まないことが、滑稽に思えて、可笑しかった。それと同時に、家族会議で暴露されていく問題が、全て他人事とも思えず、現代社会に潜む問題をも浮彫にしている気がして、背筋が凍り付いた。