愛のルーシー 公演情報 北京蝶々「愛のルーシー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    隔離空間のリアルを俳優の身体から感じたい
     擬似地球“バイオスフィア2”にて自給自足生活を送る8人の男女と、彼らを外部から観察する研究者たち。OFF OFFシアターの舞台上にある柱を活用して、上手側に研究室、柱を挟んで中央および下手にバイオスフィア内部を対置させた具象美術でした。茂った木々に実る作物も丁寧に作りこまれた美術は見ごたえあり。文字映像で上手壁に居住者たちの日記を表示し、人物の背景を伝えていました。

     スフィア内は農作物の収穫が少なく、海洋地区が汚染されて魚が取れないなどの食糧危機にあり、居住者は常に飢えていているはずなのですが、役者さんの演技は状態を説明する型どおりのもので、私には切迫感や恐怖、狂気、そして殺気などが感じられず。残念ながら、物語の起承転結が体を素通りしていくようでした。例えばシミュレーションゲーム「シムシティ」(古いですね)や冒険もののロール・プレイング・ゲーム等で、画面上の架空の街を攻略していくような手軽さに似てる気がしました。お好きな方もいらっしゃると思います。

     敢えてリアリティを求めない演出だったのだとすれば、一観客の個人的でわがままな願いではありますが、隔離された空間でのサバイバル以上に、意外だったりわくわくするものが欲しかったですね。
     北京蝶々の作品を観るのは初めてでした。作・演出の方は慎重に考えた末に題材や視点を選択されているようなので、また違った作品も観てみたいと思います。

    ネタバレBOX

     居住者たちは飢え続けて、身体的にも精神面でも限界に近づいていきますが、ある問題が解決したことで食べ物に困らなくなり、突然あっけなく平安が訪れます。でもそれまでにひっ迫した空気がなかったため、舞台上の人物と一緒にホっとしたり嬉しくなったりできませんでした。外部から白衣の研究員が入ってきた時は空間がゆがんだように感じて面白かったですが、その後にドラマが起こらなかったのも残念。

     噂話を広めて恋愛のドロ沼をよりひどいものにした女の「だって退屈だったんだもの」というセリフが痛快。
     酒と一緒に食すると毒になるきのこを、皆に食べさせた男のセリフに納得。
     「自分が食べるものなのに、他人の言うことを鵜呑みにして、勉強もしないで」
     それが私たち日本人ですよね。

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    2009/07/07 17:38

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