孤の告白 公演情報 cineman「孤の告白」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    復讐の輪
    2003年の再演。
    ものすっごくレベルの高い拘置所の面会室での会話劇。
    登場人物は5人です。たった5人なのにその人の歩んできた人生をも丁寧に描写し咳も出来ないような緊張感の連続。
    こういった心の闇を表現しながらも質の高さを維持するレベル。
    好きです。こんなお芝居。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ☆本来なら本日午前中にUPできるはずだったのだけれど・・どうも携帯PCの調子が悪くてUP出来なかった!折角素晴らしいお芝居を見せて頂いたのに劇団の方には申し訳なかったです。すみません・・。

    ネタバレBOX

    上原咲子は家政婦として働いていた家の奥さんを何度も何度もナイフで刺し殺してしまい、現在は拘置所に居た。そこへ妹の彩子が面会に訪れる。ここでの二人の会話劇で二人の関係性が理解できる。
    咲子と彩子はすみれ園という施設で育ち、小さい頃から咲子は彩子の母親代わりとして生きてきて苦労の連続だったのだ。だから、咲子にとっての「生きる」とは自分の思い通りににならず自分を殺し、彩子を守り、絶対に人前では泣かない。ということだった。

    その後、監視部長の登場によって更にこの芝居は色づく。瀬戸内寂聴のようなしゃべり口調で癒しの効果絶大。更にそのセリフに涙する。部長は痴呆の母親と二人暮しで孤独を感じるという。部長のいうところの孤独とは人や物事が自分の自由にならないと孤独と感じてしまう、という自身の話を咲子に聞かせる。咲子の凛とした表情は一歩も自分の心には踏み込ませないゾ!という覚悟のような強さも滲ませながらも、部長は咲子のその静けさに底知れない闇を想像する。

    やがて、古木の面会によって、物語は少しずつクライマックスへと近づいていく。妹の婚約者でありながら、古木と何度も関係を持った咲子。ここで、彩子の将来が一気に幸せとは逆の方向に向かっていることを観客は知らされる。

    そうして最後の面会人・中嶋えりの登場で物語りは一気に爆発する。えりは咲子に殺された母の娘で、実は咲子とは異父姉妹だったのだ。つまり家政婦として行っていた家の奥さんはかつて咲子達を捨てた母親だった。咲子が実の母親を殺した原因は母親が彩子の存在を忘れていた事だった。しかし、えりは、ここに面会に来る前に咲子のたった一人の身内である彩子を殺していた。そして咲子に告白する。「母親が殺されたように、何度も何度も何度もナイフで刺してやったわ!」と。

    結末に至るまでの役者の表情がいい。家族とは?血の繋がりとは。自責の念とは。それぞれの生きてきた属性、背負ってきたもの、個々にドラマがあり、個々に理解できない感情があり爆発する。それは血の池の底に溜まったどろどろした膿が、自分とは違う得体の知れないアメーバが少しずつ渦巻いて、それから一気に吹き出るような感覚に似ている。

    秀作でした。


    4

    2009/06/21 21:05

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  • シネマン>
    コメント有難う御座います。
    重いテーマでしたけれど人間の心情に踏み込んだとても素晴らしい秀作でした。
    観ていて鳥肌がたったほど。
    cinemanと芝居舎「然~zen~」の世界観は好きですので、追っていこうと思っています。
    ですから、タイ二ィアリスのBバージョン公演もお伺い致します。はい。(^0^)


    2009/06/24 09:50

    作った人間が
    何も添える言葉も無いほどの
    詳細なコメント、
    本当にありがとうございました。

    こうまで隅々まで
    観ていただいたのだと思うと
    冥利に尽きます。


    観た人によっては
    拒絶反応を覚えるような芝居かも知れません。
    でも
    こうして世界観を理解していただける人がいてくれる限り、
    身を削るような作品作りにも
    今後も突き進んでみようと
    思いを新たにすることができます。


    本当にありがとうございました。

    2009/06/24 03:07

    tetorapack>
    こんばんはっ!(^0^)
    お褒めのお言葉、畏れ入りますm(__)m
    ここの劇団の主宰と西村清孝の二人で旗揚げしたのが芝居舎「然~zen~」なんです。
    西村清孝は東京セレソンDXを退団した方ですから、それなりの力量はあって、作風は家族をテーマにしてるようです。前回観た「すみれの庭」は本当に素敵な作品でした。
    芝居舎は好きな劇団の一つです。

    今回の作品はひじょうに重い。しかし、姉・咲子の妹を思う気持ちと、妹にだけは真実を知られたくない、という思いやりから咲子はますます孤独の淵に佇む結果になるんです。
    そうして、結果は最悪の状況に。
    妹の為に真実を隠し拘置所に入ってまでも守りたかった彩子は無残にも復讐の餌食となるのです。まるで映画を観てるような錯覚になりました。
    心を閉ざして開かない咲子の心を監視部長が少しずつ溶かしていくんです。その心理に迫った癒しの言葉には涙が出ました。

    ワタクシも唸りました!(^0^)

    2009/06/22 00:38

    みささん、tetorapackです。
    いやー、この作品は前説を読み、HPを丹念に観て、前回キャスト版の当時の劇評などもネットで確認し、観たいと思っていたのですが、どうしても、スケジュールが合わず、観れませんでした。
    それだけに、舞台の臨場感さえひしひしと伝わってくる、みささんの詳細なコメントを読めて、観劇気分に浸ることができ、ラッキーでした。

    それにしても、かなりラストの展開、ググッと重いですね。基本的にハートフルや不安定ながらも前向き姿勢で終わる芝居が好きな(単純な)私が観ていたら、迫真の舞台であったであろうだけに、ズシンと響いたと思います。

    >家族とは?血の繋がりとは。自責の念とは。それぞれの生きてきた属性、背負ってきたもの、個々にドラマがあり、個々に理解できない感情があり爆発する。それは血の池の底に溜まったどろどろした膿が、自分とは違う得体の知れないアメーバが少しずつ渦巻いて、それから一気に吹き出るような感覚に似ている。

    う~ん、うなってしまいました。

    2009/06/21 21:33

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