掌サイズのファンタジー 公演情報 backseatplayer「掌サイズのファンタジー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い! 30歳独身男、今までと これからの人生を考える。
    いつか来た道だが、大人になったらそんな事も忘れてしまう、人間関係の機微。それが家族ともなれば、それなりに煩わしくもあり、疎ましく感じることもある。今の思いをしっかり伝えることの大切さ、それを少し斜めから切り込んだ世界観。その世界を覗いてみれば、生きるために必要な事が笑いの中に散りばめられている。祖父、父親、息子という男三世代が贈るヒューマンコメディ…ラスト、ポケットの中を探った手を開いてみれば、そこには掌サイズ(いっぱい)の幸せがある。
    (上演時間1時間45分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、少し高い平台が正面にあり、その上に黒板がある。板には色違いの箱馬が8つあるが、状況に応じて置く位置を変える。場面転換後、客席寄り中央にタバコ1箱(銘柄White iLL)が置かれ1本飛び出ている(チラシの図柄)。

    主人公・落合楽空(藤代海サン)は、シンガーソングライターになるのが夢だが、30歳になった今ではバイトに明け暮れ、夢が萎みかけている。そんな時、父・秀樹(剣持直明サン)から亡くなった祖父・士郎(冨田浩児サン)の家を売却するので、片付けを手伝うよう電話がくる。祖父の家にあった先のタバコを吸った。気が付いたら この世とあの世の狭間の世界にいた。その世界の違いは衣装の別で表す。狭間世界は、上下ブルーデニム地の作業着みたい。ここにいるのは夢半ば、やり残して死んだ者ばかり、いつの日か生まれ変わった時に同じ轍を踏まないようにと…。何故か士郎と祖母・千鶴(真野未華サン)が若かりし頃の姿で出迎える。さらに存命だったはずの秀樹まで居る。これは夢か現実か判然とせず混乱する楽空に向かって、お前はまだ生きている。ただ生きていく上で必要な事を学ばせる。同時に疎遠だった父との蟠りの解消も果たす、という教訓臭と親子愛を描いた人情劇。

    教わったのは「自由」「自信」「勇気」の3つ。夫々の必要性について、楽空に体験・事例研修させるといった観せ方。規制が作られた理由・原因を知り、その上で不必要な規制(精神的な束縛)からの解放。いつの間にか夢は萎み失いそうになるが、出来ると信じること。最後に誰に何を言われようとやり遂げる強い意志と勇気。楽(ラク)をすることが夢や幸せではない。自分らしさ、やりたい事が出来ることが楽(たの)しい人生。同じ「楽」でも意味合いが違う。父から、そんな願いを込めて名付けた名前「楽空」(実際は士郎が命名)であることを知らされる。藤代サンと剣持サンの気まずい父・子関係が実にリアル。特に 2人が同じ状況(車中)で夫々の立場から描いた場面は、そぅそぅと頷いてしまう。

    箱馬は教室における座席であり、そこへの上り下りが躍動感を生み、理屈っぽくなりそうな会話に変化を付ける。駆け回る、囃し立てるといった姿は、小中学生の教室を連想させる。自分が子供の頃に思い描いた夢、親は足元を見つめた現実話、そこに親子のギャツプが生じるが、自分が親になったらいつの間にか同じような説得口調になっている。世代を超えての堂々巡りは、時に親子の確執を生む悲劇になる。公演では現実(理屈)の世界を少し離れた場所から眺める、そんな曖昧(ファンタジー?)さでテーマを浮き彫りにする巧さ。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2021/12/18 07:52

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大