にんげん日記 公演情報 トム・プロジェクト「にんげん日記」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    10月31日午後、東京・新宿の紀伊國屋ホールで上演されたトム・プロジェクト プロデュース『にんげん日記』公演千穐楽感を観てきた。これはこの作品の作・演出が大好きな劇団の一つである劇団桟敷童子の主宰者・東憲司によるもので、出演者の一人にこれまた同劇団の大手忍が出演していたからである。

    舞台は昭和24年の九州。コリッチに掲載された解説によると、
    老朽化で休業中の銭湯...
    男はその銭湯で戦争に行った孫の復員を心待ちにしている。
    或る日、男の幼馴染が2人転がり込み大騒ぎに...、
    そして同じ日に孫の許嫁だという娘とその母親が現れて...。

    昭和24年の戦後混乱期を生きた3人の男と2人の女、
    「にんげん」達の笑いと涙の日記が...

    とあった。出演者は5人。銭湯「月乃湯」の主人で舞台となる日記を書いている勝浦文ノ輔(小野武彦)、幼なじみで絵も上手い煙突掃除の名人・松尾善太(高橋長英)、同じく幼なじみで建築会社の元社長で闇市に顔の利く浪瀨常幸(村井國夫)。この3人は俳優座養成所第15期の同窓生でベテラン俳優として活躍している。それに、文ノ輔の孫でまだ戦地から復員していない福太郎の許嫁と称する能嶋桜(大手忍)とその母親・三智枝(賀来千香子)。実はこの親子は実の親子ではなく、戦後の世の中を生き抜く爲に騙り屋となって月乃湯に入り込んできただが、なんと三智枝が文ノ輔の東京での教員時代の教え子である事が判明し、騙り屋である事を途中で白状する。しかし、かつての教え子でもあり、わずかな日々とは言え一緒に暮らし、孫のことを思い出させてくれた二人を、男3人は快く受け入れていく。そして桜の一時失踪事件を機に桜と三智枝は月乃湯を去って行く。
    物語の核には月乃湯再開という彼らにしてみれば大事業が有り、男女5人がそれぞれ出来る範囲で協力していくことで連帯感が生まれてくる過程が描かれている。

    九州が舞台と言えば、作・演出の東憲司の得意分野であり、彼の世界が舞台上に展開していくのがわかる。それを支えていたのは、5人の達者な芸。最もインパクトのあった役者は、大手忍だったように思う。
    開幕早々は男性陣の台詞がややボソボソと聞き取りにくい箇所があったが、女優陣が登場してからは会話のメリハリが明確になって観るものを引きつけていった。
    観終わって、どことなくほのぼのとした感じが心に染みついていたのは、日記を書いた文ノ輔を演じた小野武彦の好演だったと言えるだろう。ドボルザークのユーモレスクや金魚の絵も印象深いものだった。どことなく劇団桟敷童子公演を観たような感覚に陥ったのは自分だけではあるまい。

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    2021/11/14 17:15

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