実演鑑賞
満足度★★★★
開演前に流れ続けるのはダーク・アンビエント。トレンディドラマ(死語)を思わせるお洒落な恋物語には不適格だが···、そこにも意味はある。
70分で同棲5年目セックスレス2年目のカップルのすれ違いが描かれる。
Cチーム、ヒロイン橘花梨(かりん)さんにやられた。何となく見覚えがあったが、「虚構の劇団」の『もうひとつの地球の歩き方』のヒロイン。妹に「お姉ちゃん全然もてないよ」と言われつつ、店の従業員が夢中になって口説いている感じがリアル。どこにでも居そうなどこにもいない存在感、この感じを醸し出すのは高難度。主演の阿瀬川健太氏も素晴らしかった。
男女の性欲をあからさまに曝け出す描写はどことなく、「た組。」の『まゆをひそめて、僕を笑って』を思い出す。(主演の藤原季節氏が涙と洟水を大量に垂れ流しながら顔をクシャクシャにして「早漏を笑うな!」と激昂するような舞台)。
主人公にアプローチする若い女性(井上実莉〈みのり〉さん)が可愛らしい。ヒロインの妹の旦那役、森田亘氏のキャラが秀逸。マスク越しに笑いがドッカンドッカン吹き出す観客席。不快じゃない下ネタ。
作者は在り来たりの恋愛話にくるみ込んだ、普遍性のある一篇の詩を詠んでいる。ラストは重い。お勧め。