おかめはちもく 公演情報 Nakatsuru Boulevard Tokyo「おかめはちもく」の観てきた!クチコミとコメント

  • 映像鑑賞

    満足度★★★★

    二度目の投稿。全配信回アーカイブ視聴のチケット購入し、みっちりとは行かないが全回見比べた。
    期限が迫ったので未見の千秋楽を「一応見てみるか」と再生したが、千秋楽で突如芝居は「化けて」いた。スイッチ映像のチョイスもうまくなっている。千秋楽が最良とは限らないのが芝居の難しさで面白さであるが、この作品のそれはきっと千秋楽であった。
    変化の具体的な一つは、ベテラン市議の存在である。中津留氏が「そこ」に触れながらも芝居には収まりきらずに終えていた部分が、役者の演技によって炙り出され、含蓄のある=現実への奥行がイメージされる場面になった。
    彼ら「かつての政治」を体現する市議はコンプライアンス優先で表面的なクリーンさを求められる趨勢では「汚れた政治」「不透明な政治」にカテゴライズされる。だが「言葉に責任を持つ」政治家の矜持は(目に見える評価に繋がらないためか)軽視される中、彼らはそれを自らに課する。スキャンダルを騒がれ、損を被っても表立って抗弁せず、党と盟友に筋を通す彼らの背中に滲む悲哀が、軽薄な新自由主義の犬に等しい政治への潜な批評となっている。

    ネタバレBOX

    話は一地方議会の多くの議員による「政務活動費」不正使用のスキャンダルを数年前にすっぱ抜き、ドキュメント映画まで製作した地方テレビ局が舞台。今、迫る市議選に向けて「市民の政治参加」を促すどのような報道方針をとり、特集を組むかが議論されているが、通信業界からイスに収まった社長からは、「議員批判を控えること(頑張ってる議員の姿を伝える)」との方針が下令されている。
    場面は報道局室と、市議控室を往復するが、報道局では、報道の精神を貫こうとする主人公・庄野(小飯塚貴世江)と、他の社員とのそれぞれの温度差が描かれる。立ち位置の遠い方から、視聴率とスポンサーの顔ばかり窺う社長橘(村上隆文)、ホームレス女性の問題に取り組むも政治問題は保守派の女性社員西本(岩井七世)、現場より営業が言いとのたまう定時退社組の若手社員安藤(大部恭平)、市議スキャンダルを共に追求する看板報道番組の女性キャスター三枝(桝田幸希)、かつて主人公がそのジャーナリスト魂に憧れ今もそれを持ち続けようとする元報道部長(現社長室勤務)大橋(田邉淳一)、そして主人公。
    一方、市議控室ではスキャンダル(刑事告訴)を機に離党したベテラン市議の梶山(友澤晃一)と野坂(福田裕也)、そして民自党若手女性市議岸本(上西小百合)が登場し、両者の激しい「新旧」対立が描かれる。

    前半は数回の場面転換があるが、中盤からはたったの二場面、中津留氏お得意の「議論」劇が展開する。一つ目が控室場面で、企画も実現可能な趣旨に変更され、いよいよインタビューとなるが、ここで二議員引退に至る背景として不正事件と現在の民自党の思惑が徐々に露呈し、終盤では自分がスキャンダルについての回答を拒否し、無理くり梶山を紹介したにも関わらず、二人が民自党について一体何を喋ったか、チェックをさせろと息巻き、国政では常態となっている報道と政治圧力の構図があけすけに描かれる。
    最終場面はインタビューで獲れた映像を放映するか否かを巡って揺れる報道室場面(ここも30分以上ある)。細部を突けば綻びもある話だが、観客の関心は議論の焦点に向かう。最後に初めて姿を見せるのが社長。事実を伝える報道の価値を全く顧みない大手スポンサーからの出向組の説得に、一人ずつ落ちて行く。最後にさり気ない逆転劇があり爽快感を残す芝居だが、この報道室での議論が日本のジャーナリズム、メディアの病理を如実に表現していて重いものが残る。

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    2021/07/01 08:37

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