実演鑑賞
満足度★★★★
60年代末の若さと闘争と性欲と…不定形のエネルギーを体現したような戯曲を見事に今日に生かした舞台だった。ただ舞台が猥雑であればあるほど、下り坂の現代の観客とはずれが起きる。これは今回含め、2010年以降の「日本人のへそ」しか見ていない私の実感。70年代はもっと客席も活気があって、第一部の下ネタギャグの連発に笑ったのだろうか。演じるのは非常に難しい作品だと、特に2010年のテアトル・エコーの見事に空回りした舞台を見て思った。
しかし後半第二幕のレズカップル、ホモたちの誘いのところは笑わせる。この同性愛ギャグは非常にうまい。でも井上ひさしには珍しい。一幕にストリッパー、異性愛のエロスと対照的。作り自体、歌たっぷりのミュージカル仕立ての一幕と、セリフ劇に徹した推理劇のような二幕と、2つ芝居を見たような充実度だ。
たっぷりの趣向は井上ひさしの原点であり、それまでの蓄積をぶちまけたような感じ。評伝劇、香具師の口上、風刺、弱者のルサンチマンなど、後年の傑作群につながるものも多々ある。
俳優も二幕がいい。小池栄子の代議士の妾の和服姿、朝海の秘書役のメリハリをつけた演技、井上芳雄の男にモテる焦りぶり。一幕のストリッパーを演じた女優陣の度胸も良かった。小池栄子のソロ舞台は、父に犯された過去の哀切ふくめ、上品なエロスで惚れ惚れした。