『福田青木 × 演劇ユニット急発進』 公演情報 火曜日のゲキジョウ「『福田青木 × 演劇ユニット急発進』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    先週に続き、今週もベテラン組と若手組の組み合わせでした。

    ネタバレBOX

    福田青木「オーバー・ザ・ビニール」

    暗転から開けると、二人がちゃぶ台挟んで無言で座って向き合ってる。
    この無言の間が長くて、あまりに長くて、もう永遠を感じる程に長くて。
    無言なのだけれども、ただ無言なのではなく、青木さんは何度も言葉を発しようとしている、そんな青木さんを前に福田さんは凄まじい眼力の圧で拒絶の構え。
    何も言葉発してないのに、無言のやり取りが緊張感漲る。
    ここからどのタイミングで、いつ言葉を発するのか、固唾をのんで見守る時間。
    青木さんの第一声が舞台上といわずこの会場中に漲る緊張感を破る瞬間が最高、生身の人間が目の前で演じるライブの演劇だからこそ体験できる瞬間。

    二人は夫婦、ちゃぶ台の上にあるのは離婚届、福田さんが離婚を迫っている、青木さんは嫌だよと拒絶している。
    何故離婚をしたいのか、説明を求める青木さんに、福田さんがひとつひとつ述べてゆく。
    リモートワーク中の怠惰な態度等コロナ時代を反映した理由があったり、過去の振り返りの再現等々にそっとどっきり的な罠をしかけて離婚届にサインさせようとしてみたり。
    それら全ては夫に真実を知られて嫌われたくないが為の妻の愛情の裏返しだった。
    マスクで顔が半分隠れて感情が見えにくく、生身の人間と触れ合えない今のコロナ時代、色々と騙してみたり本音を包み隠す妻と、妻の言うことは何でも信じて疑うことを知らない夫、とても素敵な夫婦像でした。
    妻がどうしても知られたくなかった真実、実は自分は元男性であったという事実を妻に打ち明けられても、何ひとつ変わらず、何も動じず、むしろ何故それで別れねばならないのかという男性。
    どんな時代であっても、何があったとしても、こんな人がずっと一緒に誰より傍にいてくれるなら、大丈夫。
    とてもとても幸せな風景でした。

    ありとあらゆる罠を仕掛けてゆく福田さん、ありとあらゆる罠にもれなく引っかかってゆく青木さん、さすがのお二人、すべからくめちゃくちゃ面白かったです。
    めちゃくちゃ面白い上に、あんな幸せの構図まで観せてもらえて、もう大満足でした。

    これ福田さん青木さんお二人のコンビというところだけで考えると、作演出は青木さんなんだと思いがちなんですけれども。
    どっこい作演は福田さんで、演じて良し、お笑いやって良し、作演出してよし、なんという多才、素晴らしい。
    是非また観たいです。

    演劇ユニット急発進「DJヤマの人間ラジオ」

    ラジオのDJブース内での男女二人芝居。
    男性がパーソナリティを務めるラジオ番組、アシスタントが急遽来られなくなり、同局内の違う階で丁度別の収録のあった前代アシスタントだった女性がピンチヒッターでやってくる。

    この女性は実は男性の元カノ、そして急遽おやすみになったアシスタントが今カノという関係性。
    別れの間際、元カノと今カノの交際期間が被っており、女性は恋人も仕事も今カノに奪われたということで、今でも恨みを抱いている。
    その恨みをこのラジオの収録の本番中に、絶好の機会とばかりに男性にぶつける…というお話。

    もうね、女性が男性に対してネチネチ、ネチネチ、ネチネチ、粘着質に遠回しに、でもハッキリ分かるように嫌味をぶつけてる様が、観てて鬱陶しくて仕方がなかった、個人的には。
    それをして得るものがあるの?むしろ失うばかりじゃないの?
    そんな二股かけるような人にいつまでも執着してないで、なんで今を生きないの?
    最終的にこのラジオの収録中に女性は男性を鋭利な刃物で刺してしまう。
    明確な殺意をもって。

    ブース内に凶器を持ち込んでいた…ということは、端からそのつもりだったということ、計画的だったということ。
    でもこのピンチヒッターは急遽決まったことだったはずで…そこに計画性があったということは、つまりピンチヒッターになること自体この女性が仕掛けたことであり。
    ピンチヒッターをすることになったそもそもの要因、アシスタント、今カノが来られなくなったのも、この女性が彼女に何かしたということを示唆している。
    男性の生死までは描かれてなかったけれども、そこまでできてしまう執念が恐ろしく、嫌悪感が湧き出る。

    男性の生死が描かれてなかった、それには物理的な演出があり。
    女性が鋭利な刃物を取り出した時点からは、男性を追いかけまわしながら、舞台裏から楽屋までの階段までをバタバタ走り回っていたから。
    これがまぁまぁ体感時間長めで、舞台裏から戻ってきたかと思えば、また裏でバタバタ、戻ってきたかと思えば、また裏でバタバタ。
    何度も繰り返し、仕舞いにはちょっと正直うんざりしてしまいました。
    そこに面白味があればいいのですが、全くない、ただただドタバタしてるだけ。
    せめて戻ってきた時に回を追う毎に男性の服が切られているだとか傷が増えていくだとか変化があればまだ良かったのに…なんも変化なく、ただ何度も繰り返すだけだった。

    今回は演出的にも、お話的にも、わたしは好みではありませんでしたが。
    色んな出会いがあるのが火曜日のゲキジョウのいいところ、色んな挑戦がしやすいのが火曜日のゲキジョウのいいところ。
    またいつか。

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    2020/10/11 13:33

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