銘々のテーブル 公演情報 劇団キンダースペース「銘々のテーブル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     二幕劇。
    説明文を読むと、何か不遇な作品のようにも思われるが、実際はロンドンでの初演が726回のロングランとなり、ニューヨーク公演も実現。映画化(邦題「旅路」かなり評価は高い)もされている、テレンス・ラティガンの代表作である。私は舞台初見で、映画は未見。
     ホテルで起こる2つの事件。とはいっても、よりを戻そうとする元夫婦の話と、小心者の退役軍人が自らの不評から名誉回復する話。それぞれの話には、1年半以上のブランクがあるらしいのだが、登場人物(宿泊客やホテル従業員)の大半が同じということ以外に関連はない。
     本来は、1幕目の美人で勝気なアン(元妻)と2幕目の臆病者で内気なシビル(退役軍人に恋心を抱く)、1幕目の虚勢を張り勝気なジョン(元夫)と2幕目の卑屈で虚言を吐くポロック(退役軍人)を、それぞれ同じ女優と男優が演じるという興趣があったそうなのだが、今回の舞台では実現していない。(うまく、この主人公たちは登場場面が各幕で入違っている)これは観てみたかったな。
     とはいえ、アン役の榊原奈緒子さん、シビル役の古木杏子さんは出色の出来で、それぞれの配役で各幕を牽引しており、相手方男優の印象が薄れるくらいに痛烈な印象を残していた。まさに役者がその役そのものであるように。
     そして、ホテルの支配人ミス・クーパーを演じる瀬田ひろ美さんの、節度と哀切の入り混じった人物像もよい。宿泊客が主人公となるホテルにおいて、ジョンの婚約者として、ポロックの陰ながらの擁護者として、ほとんど他の登場人物に顧みられないのがかわいそうなほどの慎ましさがしみじみと心に残る。
     副題「あるいは孤独に向かって」、これは宿泊客全員に捧げられている。言いえて妙。
    皆孤独だけれども、けして皆孤立しているわけではない。2幕終わりでしみじみとそれを見せている。ラスト、食堂でのポロックの嬉し恥ずかしの仕草、シビルのきっぱりとした母への抵抗、それらを遠目にそしてほんのり温かく見守る登場人物たちに、この舞台の創作意図が見て取れる。

    1

    2020/03/05 12:32

    1

    0

  • GREAT CHIBA様
    今になってのご挨拶失礼いたします。
    そして、大変な状況の中ご高覧いただけましたこと、上記の素敵な感想、心よりお礼申し上げます。
    有難うございます。
    いただいた感想を、キンダーの「銘々のテーブル」サイトに掲載させていただきたく存じます。
    ご許可をいただきたくお願い申し上げます。
    これからも、キンダースペースをよろしくお願い致します。

    2020/04/13 08:26

このページのQRコードです。

拡大