満足度★★★★
鑑賞日2019/04/14 (日) 14:00
ハロルド・ピンターの戯曲。
まだ観たことがない演目なので、初めての劇場新宿シアター・ミラクルまで足を運ぶ。
うわあ、1階のエレベーター前汚いなあ。大丈夫かよここ、と驚いた。歌舞伎町が近いと言ってもなあ。
さてエレベーターにてビル4階へ。
しかし、ここからは別空間。
さて、舞台の感想。
まずは、とても品の良いお芝居を見せてもらった、というのが1つめ。
タイトル通り、この話は不倫話である。
ジェリーと愛人のエマ、そしてエマの夫・ロバート(ジェリーの親友でもある)の3人構成。ピンターらしい少人数編成だ。
フライヤーだと気が付かないけれど、この3人はなかなかの美男美女。
舞台は3つに区切られていて、1つはテーブル席(レストランだったり、ジェリーとエマが逢引きをするアパートだったりする)、1つは書斎(ロバートの家だったり、ジェリーの家だったりする)、そしてベッドルーム。
この3景を無理なく行き来することで、それぞれのシーンは円滑に切り替わっていく。
最初の場面は、別れたジェリーとエマが2年振りにレストランで会うことから始まる。
そこから時間は、どんどん遡って、最後はロバートとエマの結婚式の夜にジェリーがエマを口説くシーンで幕を締める。
冒頭のくたびれたような倦怠感から、ジェリーとエマの蜜月、そして2人の出会いと逡巡。背信とは何かをその根源に遡るように見せてくれる。
ただのメロドラマではない。ピンターらしいテーマ、人間がお互いを知るということの絶望。知らないことを知っていると思い、知っていることを知らない、コミュニケーションによる情報伝達の不可能性。そのとき、愛情というものはどのように機能しているのか、そもそも他社を知りえな上で恋愛や友情は可能なのか、それは自我が抱えたままの他者への幻想ではないのか。
ピンターの視線は、冷ややかでかつ透徹している。
うん、面白い。
中村美貴さんのファッションセンスの良さと、抱擁シーンで発散される熱量に、久し振りにメロメロでした。