満足度★★★★
鑑賞日2019/04/11 (木) 19:00
座席1階
亡き妻の残したパンのレシピ。会社人間で定年直後に妻をなくして閉じこもる夫が、妻がやろうとしていたことを引き継ぐようにして地域に溶け込んでいく物語。ホームレス支援をする団体でボランティアをする元ホームレス、精神的に病んでいる人たちが、この夫を支えるように取り囲むのがいい。
ホームレスへの世間の無関心、町内の偏見など、よく取材を重ねて練り上げられた脚本だと思う。親の過干渉で引きこもる少女が元ホームレスのメンバーとパンを焼くことで自立の道を歩こうとする話も、リアリティがあった。しかし何よりも、ホームレスとか精神病とか引きこもりとか全く関心がなかった定年後の会社人間が大きく変わっていくのが、この舞台の見どころだ。
台詞の中に「自分たちは普通の人間」といってホームレスとは違うという場面が出てくる。何が普通かというものさしがいかに狭い世界で使われるのかということを、この舞台は実感させてくれる。