夜の来訪者 公演情報 劇団Player's World「夜の来訪者」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    物語はラストでどんでん返しするという典型的なミステリー作品。しかし、公演そのものがミステリーで誰が何のためにという疑問を観客に投げかけていた。

    説明には「夜の来訪者」---J・B・プリーストリーの傑作ミステリー戯曲(1946年)を、劇作家・内村直也が日本に紹介するべく舞台を戦後の日本に置き換えて翻案し、と書かれている。当日パンフには内村直也(1976年作)と書かれているから、日本の高度成長期を背景に書かれた作品のようだ。

    この公演の魅力は、高度成長を通じて、いや現在でも顕著な貧富、格差問題が根底にあり、それをある家族の一夜を通して痛烈に批判するところ。その見せ方は、人の知りたいという知的好奇心を刺激する”推理”という手法を用いているところが巧み。
    (上演時間1時間50分)

    ネタバレBOX

    セットは、中流家庭のダイニング・リビングルームといったところ。上手側にテーブル、その上に飲食物。壁際に食器棚、中央奥が別室への通路、下手側客席寄りに応接、サイドボード、玄関に通じるドアになっている。現代であれば携帯電話等を使用するが、本公演では屋内の固定電話を使用していることから年代は推し量ることが出来る。さて、女中はいるが大社長の邸宅ではないな~。

    梗概…説明から、秋吉家の娘の婚約者を招き結婚前の食事会を開いていた、ある大会社の社長一家。幸福でいっぱいの家族のもとに、一人の刑事が訪ねてくる。刑事は、自殺したある女性について、事情を聞きにやってきた…というもの。秋吉家の両親、娘その弟、娘の婚約者はそれぞれに自殺した女と知り合いという、出来過ぎた設定。
    いくつかの違和感(身分確認、事実確認など)が結末に先回りし、聴収内容も後々綻んでしまい興味は半減。とは言え、刑事の事情聴収という、一種の緊張、緊迫感を漂わせる雰囲気で進む。時に感情が高ぶり大声で、時に咽び泣きなど人それぞれの反応が異なる。その濃密な演技は素晴らしい。

    当日パンフに、登場する人物を日本社会、その時代の社会構造を象徴しているかのようだと。例えば父親は、資本家もしくはブルジョワを代表、娘は戦後リベラルに代表される”悔恨共同体”など、思わず頷いてしまう批評眼である。この社会的な見方と、やはり人間の心理を深く突いたテーマが共存するもの。刑事は「人間はひとりでは生きていけないのです。」そう言い残して刑事は去る。しかし、残された家族の本当のドラマはそこから始まるような、新たな電話が…。

    「物語」はミステリー内容・構成であるが、この「公演」こそ誰(刑事?)が何の(不和を持ち込む)ために行ったのか、という根本の疑問を観客に投げ掛けたまま終わっている。その意味で「夜の来訪者」は観客・自分自身への”考える又は感じる”メッセージを発していたようだ。同時に、娯楽性と社会性を両立させ、推理劇としても社会劇としても観客が二重の面で楽しめるようにしている。
    上演後の役者挨拶には刑事は現れず、玄関口に人影が…本当に刑事のような人物が居たのか、幻影を観ていたのでは、と考えてしまう実に意味深な幕切れであった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2018/12/16 23:21

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