はたらくおとこ 公演情報 愛知教育大学 劇団把゜夢「はたらくおとこ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2018/03/03 (土)

    序盤はぬるい感じで始まった舞台だったのだが… 破産した工場に残る行き詰まった人たち… 抗議の手段としてテロリズムに走る土地の人たち。徐々に閉塞感がはっきり見えてくる…この地方の空気。


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    ネタバレBOX

    (続き)

    リンゴ園からパッキン工場と事業失敗を重ねていた茅ヶ崎。
    潰れた工場で意味もなく就業時間が過ぎていくのを待つだけの夏目・前田望ら従業員。
    人手も金もなく広大な農地を管理しきれずに違法な強い農薬に手を出した佐藤蜜雄。
    農薬の影響で片目の視力を失っている佐藤涼。
    兄に反発して家を飛び出し、工場で泊まり込みバイトをする佐藤豊蜜。
    組合の工作員として涼に手を出していた川口満寿夫。
    工場を逃げ出して怪しい仕事に手を染めた前田愛。
    そして不法投棄の運び屋 真田三平。

    いずれも…どこにあってもおかしくない暗雲たるリアリティで迫ってきた。

    …ただ一つ

    …序盤から明らかな違和感を放つキーワードが…

    茅ヶ崎が追い求める
    「舌が痺れるような、渋い… しっぶ~いリンゴ」

    前田望が… 苗木に罵声を浴びせながら…
    わざわざ渋く育てるリンゴ…

    ゲンコツ。

    ​明らかに売れるとは思えない異質な「渋いリンゴ」の暗喩するところは何だったのだろうか。

    「人生における激しい苦難・辛酸」を背景に置いているのは感じられるが、茅ヶ崎の人生において、それが求めるべき輝きであるはずもない。
    かと言って、その辛酸を世間の者たちに味合わせてやろう…なんて悪意であるとも思えない。

    茅ヶ崎が最悪の事態の中で味わった「渋いリンゴ」… それが与えた衝撃は… 彼女の中の何かを「壊してしまったのではないか」とすら思える。

    …​その上で…あの壮絶な「放射性廃棄物を喰らうシーン」である。

    その行いに合理性は一切皆無だが、そんな理屈を蹴散らして呑み込む「壮絶さ」と…「茅ヶ崎が求めていた渋さ」を感じさせた演出は、巨大なリスクを背負ってしまった現代科学と巨大産業…そして、それに狂う人間たちを皮肉った…とも感じられるが、果たして…。

    ​そして、そこまでの盛り上がりに水を差すような…暗転後の半「夢落ち」の様な展開。

    茅ヶ崎が許したものは… この作品が許したものは… 決して夏目の過去だけではあるまい。決して暗転前までの世界が… 夏目の妄想のみとは言い切れない… 非現実とは言い切れない世相の中… それすら呑み込む神の目線なのか。

    正直言って容易には呑み込めないが、観客に… 一切の爽快感や安易な感動を許さない…でも目を離すことのできない…心に…もやもやっと… あの「廃棄物」の様なものを沈殿させる芝居でした。

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    2018/08/17 23:01

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