『首無し乙女は万事快調と笑う』&『漂流ラクダよ、また会おう』 公演情報 ポップンマッシュルームチキン野郎「『首無し乙女は万事快調と笑う』&『漂流ラクダよ、また会おう』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「漂流ラクダよ、また会おう R18」を鑑賞。
    テイストの違う短編が問いかけてくるのは「存在」ではないか。
    信じていた「自分」が相手には「別の自分」として映っていた。
    自己の存在のはかなさ、自己主張の虚しさ、
    所詮自分は“相手に委ねられている”ことの腹立たしさ・・・。
    自分を見失いがちなのも当然、私たちは“人の思惑”で生きている。

    そんな真面目なテーマを内在させながら、R18で崩してみせる、
    このバランスがいつも楽しいんだな。
    少々の下ネタでブレるようなテーマではないから出来ることなのだろう。
    「君といつまでも」の静かな狂気に寄り添う哀しみが素晴らしい。

    ネタバレBOX

    R18の回の楽しみは、そのナンセンスな笑いを織り込んだアドリブっぽいやり取りと、
    にもかかわらず結構シリアスな本流がブレずに貫かれているのを観ることだ。
    “R18の看板”井上さん、いつもありがとうございます。
    手に汗握る活躍でした(笑)

    ひとりの作家が、謎の知的生命体(作家にはラクダに見える)と交信、
    互いの星の物語を語る、というかたちで短編作品がくり広げられる。

    全編を通して問われているのは「存在」、
    そして「存在」は「相手からどう見えているか」が全てである、ということ。
    自分が信じる「自分」よりも「相手にとっての自分」が優先するという理不尽が
    面白く、皮肉っぽく、また痛切に語られる。

    いつも華奢な身体を惜しみなくさらけ出す野口オリジナルさんが
    誰だかわからないようなラクダメイクで熱演、骨太の知的生命体になった。
    声も太く、表現の幅を感じさせた。

    「私の彼は甲殻類」の増田赤カブトさん、観る度に上手くなるなあ。
    ひとり芝居をここまで集中させ、笑わせるようになったかと、母の気持ち(笑)
    台詞も間も、ほんとに面白かった。

    「老婆と椅子」の吉田翔吾さん、心を持つ椅子の気持ちが伝わって切ない。
    結局夕子は望み通り幸せな死を迎えられるのだと暗示していてほっとする。

    「君といつまでも」の加藤慎吾さん、ストーリーを知って観ると
    冒頭からその表情や台詞に苦いものが混じっていることがわかる。
    認知症の進んだ妻が自分に見ているのはかつての恋人であり、
    自分はどこにもいない、という絶望的な状況がどれほど人を苛むことか。
    それでも病む妻に寄り添っていこうという決意が辛く哀しい。
    この老夫婦の後日談が観たいと思わせる。
    自分の存在を否定する妻を、夫はどこまで受け入れるのか、
    それは愛情と呼べるのか・・・?

    笑いながらこんな重いテーマを突き付ける、
    だから吹原幸太さんの作品から目が離せないのだ。



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    2018/08/15 03:12

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