満足度★★★★
今の政治情勢っをネタにした喜劇で、よく御存じの題材だけに客席の受けはいい。松尾貴史の安倍のまねなどは、よく特徴(その逃げ回りの話術の脚本も含めて)を伝えて、大受けである。二時間足らず、新劇版の「ニュース・ペーパー」である。こういう生の風刺劇は新劇から遠くなっているので、いい試みだが、正直言えば、こういうのは、ニュースペーパーに任せて、永井愛ならもう少し深くこの問題を人間的に扱った作品を書いてもらいたい。ニュースペーパー的な素材だから、俳優もそういうタッチに慣れた安田や松尾は生き生きしているが、他の男優陣は、どちらでやっていいのか計りかねているし、ご贔屓・馬淵英里何も、地の気の強さが出てしまって深刻になりすぎた。
例をあげせば、「コペンハーゲン」のような芝居だって、永井が腰を据えて書けば書けるし、井上ひさしを越えていけることにもなるだろう。観客は、井上調の問題提起、解決はもう過去のものだと言わないだけで、知っているのだ。