粛々と運針 ツアー 公演情報 iaku「粛々と運針 ツアー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    演劇は、愛や勇気や希望を与えてくれる華やかなものだと誤解されているのではないか。実は、私たちの人生にもっと必要で実用的なものなのだと気づく。

    ネタバレBOX

    舞台には、高さの違う3種類のイスが置かれ、舞台左右の一番高い木のイスに若い女と年配の女が座り、針に糸を通して、床まで届く反物のような白い布をひたすらチクチクと縫っている。
    子どもを持たないと決めた夫婦、妻が妊娠したらしいと判り産むか産まないかで揉めている。母が倒れて病院に見舞いに行った帰り、母の希望の尊厳死について話す兄弟、結婚して別居している弟と、母と同居で独身、定職につかずコンビニでアルバイトをしている兄の二人。この二組が入れ替わりながら、舞台中ほどのイスに移動し会話を続ける。
    課長昇進まじかで、いい母親になど、なりたくない妻、仕事をする自分に自信がないからせめて父親になってみたい、仕事を辞めて主夫になってもいいという夫。
    お母ちゃんには手術をうけて元気になって欲しいという兄、お袋を母親役から解放させてあげたらどうかという弟。
    彼らの会話が、行きつ戻りつしながら、繰り返される。その二組の会話が、時に絡みあったりするところがあったりして面白い。
    だんだんと激高してくる二人を眺めていて、ふいに、産まれてくる子どもと死んでいく母親が実は、無関係と思っていた両サイドの二人の女優で、子どもと母親であると分かる、巧みな展開。
    人は結局、長い時間を掛けて、時にはチクチクと心を刺すような思いをしながらでないと相手のことが理解できない。回りくどくても、無駄なような長い時間がかかっても、それが生きていくことだと、しんみりと心に沁みてくる。
    いつの間にか、彼女たちが縫っていた長い布が6人の周りをゆるく囲んで繋がっている。
    客席からは、若い観客だろうか、鼻をすする気配が聞こえた。

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    2018/06/19 21:22

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