鏡の星 公演情報 劇団あおきりみかん「鏡の星」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    近未来の宇宙旅行、現実の時間と場所から距離を置くことによって、逆に客観的にある出来事が浮き彫りになる。脚本担当の鹿目由紀女史が、チラシに2018年3月、文化庁の新進芸術家海外研修制度でイギリスに行って、他文化に触れた驚き新鮮さといったことが書かれていた。本公演にもその刺激・影響のようなものが表れていた。また演出を外部の小林七緒女史に依頼し2人の化学反応のような公演が出来上がっている。
    物語は、宇宙旅行と称した国家政策のような、大きな世界観などが比喩的に描かれた秀作。

    自分では少し気になる、というか疑問が…。
    (上演時間2時間) 【2018.6.18追記】

    ネタバレBOX

    ネタバレのようで恐縮だが、気になることを記してしまう。弓月(川本麻里那サン)がミラー星に残って子を産む決断をする。この星で育児はできるであろうが、その後この星で”人間”として生殖できるのか。
    さらに、この子は地球にいる時に人工授精で授かったという。主人公が震災で家族を亡くした悲しみ、家族を成したいという気持から愛情なき人の子を宿す。"愛情”ない”生殖”、確かに自分の子、家族を持つことが出来るだろうが、何か釈然としない。物語の社会性のような世界観の広がりは感じるが、未来に広がる人間そのものの世界はどうなるのだろうか少し心配、不安に思った。

    【2018.6.18追記】
    物語の設定は40年後という近未来にしており、現実と距離を置くことによって現代社会にある問題・課題を近視眼的になることを避けている。しかし、地球に相似したミラー星での出来事や宇宙船-影法師船内の人間関係やロボットとの関わりは、どうしても現実問題を直に連想してしまう。この宇宙船に乗っているのは日本人ばかり。集まったのは東北、熊本という地震被災地、沖縄という基地問題、さらには愛知という南海トラフを連想させる人物を登場させる。未だにしっかりした対応がなされていない地域ばかり。さらにロボット法の成立。ロボットの存在を認めつつ、他方違和感・差別感を抱く感情、そこには色々な意味での人間差別が垣間見えてくる。もしかしたらイギリス留学で他文化に刺激されたことと、欧州における移民問題にも関心を持ったのだろうか。そんな問題意識を感じさせる骨太作品であった。

    しかし観せ方はポップ、コミカル調で面白可笑しく物語に引き込まれる。物語内容(脚本)と演出の充実感が心地良い。”搭乗”人物の背景が語られ、その心情が豊かに描かれる。それは船内にあるミラーのような枠の中で独白するような形で綴られる。その苦しい胸中を癒してくれる人、そしてロボットも製造した博士にメンテナンスという形でケアしてもらう。悩みは1人では抱えきれず、相互理解のような関係を築くことが大切。それはミラー星で出会った自分自身(ミラー)を通じて知ることになる。異文化を知ることは改めて自国のことを知る、再認識することに繋がるのだと…。

    さて、このプロジェクトの真の狙いは国策にあり、その成功のためには多少の犠牲はやむを得ないという怖い側面もあり、ミラー星の人達の正体も明らかになる。空想劇の中に社会風刺を織り込ませており、色々と考えさせられた。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/06/12 17:49

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