キャガプシー 公演情報 おぼんろ「キャガプシー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    公演は、静かに力強く、そして不思議な”思い”が湧き上がってくる力がある。それは美しく切なく、そして愛に溢れており胸を締め付けてくるようだ。閉鎖的な所から開放され、その先に未来・希望という光が見えてくる。

    再演であるが、前(2017年11月)より動きが軽やかに感じる。もっとも逆に重厚さがなったような気もするが…。外的な、例えば季節的(前回は肌寒かった)なことが関係しているのだろうか。
    さて空想の物語であるが、現実での出来事を連想させ、寓意があるような。その物語が紡がれるのが「おぼんろ特設ギャガプシーシアター」である。主宰・末原拓馬氏の言葉が誘う…参加者は自分で色々な想像をし、夫々の空想の世界を膨らませる。参加者はいつの間にか劇中の深い森の中へ…。
    (上演時間2時間強)

    ネタバレBOX

    閉ざされた森というシチュエーション、それを表現するための特設劇場(葛西臨海公園内)はテント。外観はファンタジックなもので、内部は観客=参加者から提供された衣類や小物類などが、その特性に合わせて配置されている。場内は雑然とした中にも人々の温もりが感じられるような…。パイプ組した櫓のようなもの、その上り下りの動作によって躍動感とテンポの良さが生まれる。
    すでに場内が おぼんろ らしい参加型公演になっている。自分が観た回は立見の人が多く、それだけ人気のある公演ということだ。

    物語は、人間の穢れを人形(キャガプシー)に押し込め、その人形同士を戦わせて穢れを浄化させるというもの。人間の勝手さ、人形の哀切が鮮明に描かれる。もちろん寓意を籠めている、その訴えは強く明確に伝わる。先代・人形師が作ったキャガプシー・トラワレ(末原拓馬サン)は何年間も無敵。その人形師が殺され娘・ツミ(わかばやしめぐみ サン)が後継した。その娘が作ったキャガプシー・ウナサレ(高橋倫平サン)は無敵の人形を兄と慕い、殺し合いを望んでいない。逆にこの森から逃げ出すことを提案するが…。

    人間の穢れを他者(人形)に負わせ、人間は素知らぬ顔の傍観者。また自身もギャガプシーでありながら、興行主になるネズミ(さひがしジュンペイ サン)。自分のこと、または身近な周りのみに気を配る、そんな視野狭窄で安全地帯の世界観が描かれる。しかし森の外は素晴らしい世界、その開眼と広がりに幸せを見出す。森から抜け出す(会場テントの一部を開け外に出る)と、そこは葛西臨海公園の広場。公園の風景を借景し人と自然の調和、共生が表現されるという見事な演出であった。
    公演全体は”おぼんろ”らしいファンタジー、そこに籠められた悲しく、しかし優しく美しく力強い物語であった。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2018/05/23 11:47

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