逃げぬれて、夜 公演情報 くちびるの会「逃げぬれて、夜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「2017年 せんがわ劇場演劇コンクール オーディエンス賞」受賞団体の記念公演。
    夢・希望と焦燥の挟間で生きる衝撃的な青春物語。社会・地域の澱んだ日常の中で、爆発寸前の不穏な何かを膨らませている。諦念と再生にちょっと冷たいが、希望の光が射し込むような…。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    セットは衝立のような仕切りを可動させ、アパートの一室、スーパーやコンビニの控え室を出現させる。その情景・状況を観せ、またラストにはブルーシートを利用し多摩川河川敷、川の氾濫というダイナミックな演出は巧み。場面に応じた舞台転換は観客を飽きさせず、物語に集中させていた。

    物語は、ある雨の日に少し怪しげな女性が古いアパートの一室を訪れ、「あなたは今、幸せですか?」と問うところから始まる。部屋にいた女性・幸子(橘花梨サン)は少し考え、身近なものを説明した。絵本作家であるが売れずスーパーのアルバイトをして生計を立てている。生活圏内はアパート-スーパーの徒歩15分の往復で、世間から取り残されている。一方、新聞配達をしている伸夫(佐藤修作サン)は、世の中で起きている悲惨な事件(テロ・紛争等)が書かれている新聞を配るだけ。自分は何もしない・出来ないという忸怩たる思いを抱いていた(ロボット化し動けない)。ある日、幸子が捨てた絵本を伸夫が拾い、2人は絵本交換日記のようなことを始める。それぞれの職場で起こる不条理のような出来事、その愚痴ともつかぬことを書き綴り…。

    焦らない、闘わない、無理をしないから生きられる。しかし、ある雨の日を境に覚悟を決めて一歩を踏み出す。人間心理のパラドックス。伸夫が乗っている自転車を”リンリン丸”と名付け、理不尽な社会へ警鐘を鳴らすため、「予言新聞」(場内で配布)を発行することにした。しかし大風呂敷的発想は、2人の経済的な破綻を招くようで…大空から鳥の目のように俯瞰すること、地を這いずり回る虫の目で見ることの大切さを知ることになる。少し長く、途中で終わりかと思わせるシーンもあったが、自分は”俯瞰”と”目先(近)”の両方を描きたいためと受け止めた。

    舞台転換の巧みさ、タイトルの「逃げぬれて、夜」にある通り雨に象徴される水の音が印象的であった。また強調、余韻付けとしての照明もスポットライトの照射が効果的。どこにでも居そうな等身大の人物の心情を心憎いまでに映し出す。重く湿った雰囲気の内容であるが、演技は多少コミカルにし魅力的に見せ、人物像を引き寄せている。
    ”せんがわ”という場所を意識した地域設定も微笑ましく、先に記したコンクール オーディエンス賞への謝意が感じられる。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/04/24 11:40

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