ブラインド・タッチ 公演情報 オフィスミヤモト「ブラインド・タッチ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     今作は坂手 洋二氏が2002年夏脱稿、秋に上演された作品である。つまり9.11の翌年の作品だ。(華5つ☆)必見!

    ネタバレBOX

    通常、テロに対しては軍では無く警察(公安)が対応する。然し米統領であったブッシュが、テロとの戦争を掲げて戦争を始めたことは、ご存じの通りである。この時から戦争の質が変わったことに気付いている人々は多かろう。ファルージャ攻撃などで、イスラエルがアメリカに軍事オブザーバーとして教唆していたことは、知られた事実である。この時イスラエルがその前例としたのは、無論、パレスチナジェニンでの虐殺である。アフガニスタン、イラクを「戦争」の対象としムスリムを民主主義の敵としたのも、流れを見ると頗る怪しいのであるが、まあ、今作に直接関係ないので、この話は此処までにしておく。
     翻って日本の公安、検察である。かつて鬼と恐れられた検事がヤメ検になった時に聞かされた話であるが、海外から要人が来日する際、何の咎も無い旧活動家などの予防拘禁は当たり前のこととしてやっていたという。法も何もあったものではない。参考までに以下のリンクを紹介しておこう。(http://www.asyura2.com/12/senkyo127/msg/472.html)
    今作の作中主人公の逮捕、30年以上に亘り獄に繋いだ件も無論、嫌疑はでっち上げである。日本という所は、人間という概念を警察殊に公安と検事は持っていないようである。右翼については大甘であるが、左翼に対しては予め人権を剥奪したような対応を見せる。今作にも、実際モデルになった方が居る。物語に出てくる獄中結婚も事実だ。背景にあるのは、1971年の渋谷事件である。今作では出所したことになっているが、実は未だに獄に在り、弁護団は新証拠や検察の持つ全証拠開示を請求、再審請求を突き付けるべく動いている。渋谷事件については、自分で調べて頂きたい。
    物語は、出獄した日に、結婚した女性の借りたアパートに帰宅したシーンから始まる。このファーストシーンが、いたたまれない。長らく世間から隔離されてきた為に一種のデペイズマンを感じざるを得ない夫に18年前獄中結婚をした妻は、何くれとない気遣いを見せるが、坂手氏の描く脚本の科白の想像力の確かさを2人の俳優が見事に果実として稔らせている。
    舞台セットは、中央に8畳ほどの和室、部屋の下手壁際にはスタンドピアノ、ピアノの脇に袖のような空間が設えられ、開き戸がついている。上手奥には押入れがある。部屋には他にTVなど。和室奥下手が台所、上手に部屋への入り口があり、このセットを囲む空間は観客席側に縁台が置かれた庭。下手は通路、上手はこの前庭に直行して全体を為している。
    決して広くは無い部屋にピアノが置いてあるのは、夫がもう一人の逮捕者と共に、ピアノバンドをやっていたことから。出所したら、弾いてもらおうと思ってである。昨日、初日が終わったばかりなので、作品内容については、これ以上のネタバレはなるべく控えておこうと思う。然し、この後、上手の庭も変化してゆくし、実に驚くべきシーンも現れる。
    ブラインド・タッチに関しても、科白によって彼のこの言葉に対する解尺の変容が語られてゆくことに注意していて欲しい。
    良く練られた脚本に、極めて質の高い演出、見事な二人の俳優の演技、舞台美術、転換の見事、照明、音響など効果の素晴らしさ。そして驚くべきラスト。必見の舞台である。

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    2018/03/20 14:19

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