わが闇 公演情報 劇団俳優座演劇研究所「わが闇」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    鑑賞日2018/03/15 (木) 13:30

    座席1階1列

    俳優座に限らないけれど、研究生公演のよいところは、同じ座組で比較的高い頻度で継続的に舞台が観られるところにある。
    俳優座研究員に限ると、27・28期を前回「花粉熱」、今回「わが闇」と連続して拝見したのだけれど、この2期はとにかく芸達者が多く、観ていてはっきりと「うまい」と感じる。
    石川修平さんのうざったさは相変わらずだし、金本徳義さんの惚けた風情は十分に楽しめるし、辻井亮人さんの軽妙さは適度な不快感を与えてくれる。
    女優陣でみれば、椎名彗都さんは年齢に似合わない落ち着きが何と言えない切なさを醸し出しているし、天明屋渚さんの可憐さは天性のものだと思う。他の役者さんまで述べだすときりがない。

    むろん、そこに留まって・よいというものではないだろうし、別のステージに上がって欲しいものだが、まずはお金をとって見せる舞台としては十分に及第点だと思う。

    ネタバレBOX

    さて、舞台の内容なのだけれど、どうも「花粉熱」のようなテンポの良い展開が観られない。物語としてのまとまりがない。登場人物の心情が、観客席に届かない。

    例えば、立子はこの舞台の題名にもなる「わが闇」という小説を世に出し、自己の心情を巧みな文章で吐露することで賞をもらう。立子の小説は私小説であるがゆえに、このタイトルがもつ意味や、描かれているであろう柏木家から模した描写は、柏木家にとってけして心安らかなものではないであろう。類子の反発は当然である。
    しかし、この作品を書いた立子の苦悩がどうしても見えてこないし、おそらくあるであろう、父・伸彦の煩悶も漏れ聞こえてこない。
    この「闇」は、母・基子の精神障害・自殺、父の再婚に端を発しているとなれば、この原点がもっとクローズアップされてもよいし、ラストにおけるカタルシスに繋がってもよいように思うのだが(父の写真裏に残された遺言は、映画化される映像で語られる立子の評価などとは大きく異なり、むしろ観客は当惑しないだろうか)、それがない。

    これは、演者の問題というより、どこか脚本か演出の問題ではないのか、と思わざるをえない。「花粉熱」の舞台と比べれば、という話だが。

    これが修了公演。27期生の今後のご活躍を祈念しております。

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    2018/03/20 10:20

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