ゴミくずちゃん可愛い 公演情報 ぬいぐるみハンター「ゴミくずちゃん可愛い」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    北区・飛鳥山公園に特設野外劇場を作り、そこで社会性の強い物語が繰り広げられる。と言っても公演のイメージはポップ調で観(魅)せるもの。公演の特長は開放感ある会場に閉塞する世界観、主人公の姿は生き活きとし、周りの人々との温かく仄々とした交流を描いているが、その未来は必ずしも楽観視できない怖さも潜ませるなど、相反するようなことが…そこに不条理が観てとれる。
    (上演時間1時間50分)

    ネタバレBOX

    舞台は、公園という場所(自然)を後景に従え、中央にレンガ作りの変形アーチ状のオブジェ、その横に台座のような別空間。そこは夢の谷(通称:ゴミ谷)というゴミ溜め場という設定であり、主人公ゴミ(籠谷さくらサン)は生まれてすぐ捨てられた。

    梗概…彼女は14歳、周りの人々に支え愛され育ってきた。しかし劣悪な環境下で育っているため、毎年・誕生日に手術(体内浄化が目的か)しなければ生きられない。なぜ自分だけ痛く辛い思いをしなければならないのか。だから手術のたびに周りの人々が輸血をしていることなど思いもよらない。彼女自身の生い立ちと同時に世界の動きを章立にして展開していく。
    世界中のゴミが運ばれてくる「夢の谷」。ゴミちゃん達は毎日楽しく平和な暮らしをしていたが、他方、世界の各所で大・小規模の戦争・紛争が激しさを増しゴミ谷に運ばれてくる瓦礫の山も増える。そして世界のことなど何も知らない純真無垢な少女達が世界、現実を突き付けられ…。

    冒頭の展開から、始めは「環境」問題も含んだ、広範な社会批判を観せる物語かと思った。しかし戦闘・戦場シーンから瓦礫のゴミに繋げるところから反戦的な色合いが強くなってきた。先にも書いたが、その観せ方はあまり重くならず、日常を明るく元気に過ごす少女達の生活から切り取っている。一方、意識しなければ社会・世界情勢に疎くなり足元に軍靴の響きが大きくなる怖さ。その戦争を戦場カメラマンの目を通して描く不条理劇、観応えがあった。

    躍動的な演技、軽快な台詞回し、理屈では追いかけられないようなストーリー展開、野外劇場らしいスペクタクルな観せ方など、じっくり考える批判性の強さとは真逆の世界観で演出する。大勢の役者が「夢の谷」で生きざるを得ないことを表すため、ほとんど役者が舞台上にいる。しかし主要な人物の立場・役割は明確で物語の訴えはしっかり伝わる。
    ラスト、「夢の谷」という名前とは裏腹な劣悪環境下、ゴミちゃんは18歳でその人生の幕を閉じる、ハッピーエンドに終わらせない強かな公演である。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/03/04 13:11

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