旗裏縁-本能寺異聞- 公演情報 ThreeQuarter「旗裏縁-本能寺異聞-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     「敵は本能寺にあり」今更言うまでもない、明智光秀謀反の号令として知られるフレーズだが、今作通常の歴史的解釈とは異なる解釈で成立している。ちょっと尺は長く140分程度と当初言われたのだが実際には150分超。

    ネタバレBOX

    だが一瞬も集中を途切れさせることのない舞台になっていたのは、脚本が良く練られていることと、主要登場人物に対して我々が何となく抱いているイメージを作品内の登場人物に上手く重ね合わせて不自然な感じを持たせないこと、役者陣が基礎をキチンとこなしていることが伝わる演技・滑舌の良さに加え、登場人物が26名と非常に多いにも関わらず、各々の動きをキチンと計算して配剤した演出の上手さ、音響効果を充分に考慮しつつ観客を引き込む技術の巧み、照明とのコラボ他、脚本自体がセンチメンタリズムを排することで戦さの酷さをキチンと最後まで過不足なく伝え得ていることが大きい。
     実際にはどのように各登場人物を造形していたかについて、具体例を挙げておこう。信長の性格については極めて合理的で奔放、進取の気に富むというイメージがあると思うが、これを天下布武をその合目的性とし、戦世を終わらせる為に頂点に立った人間として描くと同時に、極めて優れた想像力と聡明な頭脳により他人の気持ち、行動を的確に予測した上で行動する人物として描かれ、而も権威だの伝統だのが非合理的であれば歯牙にもかけぬ人物として描かれる。
     また、油断のならぬ信長を相手に間者を用いて、天下布武をサポートしつつ、己の目指した世界の実現へ着々と歩を進めてゆく秀吉の抜け目のなさ、耐えに耐え、義に殉じ武士としての価値観の下に自己実現を図ったしたたかな家康、知的で家柄も良いのだが、愚直な郷土愛を大切にするが故に乱世の価値観を根底では容認しえぬ優しい側面を持ち、かかるが故に戦の酷さを容認し得ぬ光秀といった具合である。
     無論、他の登場人物それぞれがキャラの立った科白で脚本化されると同時に演じられていることから分かるように、演出の力、演技力も並大抵ではない。
     またこの小屋、劇場前方の席には段差が無いので、後列に腰かけた観客は見切れが起きやすいことを踏まえ、殺陣の多い作品で役者達には足腰に負担が掛かって大変なのだが、舞台中央から上手にかけて階段を付け、上がり切った所を踊り場にして観客から舞台が観易いように配慮してあるばかりでなく、小道具の使い方もグー。タイトルにも大いに関係してくる各武将の旗が、象徴的に軍の動きを示したり、どの武将が、どのようにプロットに関わっているのかを無駄なく表現していた。裏回りのスタッフたちの対応も優れたものであった。
     

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    2018/02/13 15:38

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