きんかく九相 公演情報 劇団芝居屋かいとうらんま「きんかく九相」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    全般的にしっかりコンセプトに即した…統一感と美しさと奥深さを感じる舞台美術。

    そこに、ただでさえ窮屈な世相の中で、自身の障碍から波及する精神の著しい閉塞感を役者が表現し、そして…そこから生まれる美しいものへの渇望と憎しみ、身勝手な理想から溢れ出す「狂気」を舞台上に映し出した。そして最後のどんでん返し?… 原作から一歩抜け出した印象です。

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    ネタバレBOX



    (続き)
    各論。まず見た目から入るけど、舞台美術を始めとする演出が本当に美しい。
    炎や血をイメージしているのか…冒頭、…天井から垂れ下がる意味ありげな赤い布。白赤黒を基調とした統一感ある衣装。三・四層ぐらいに重ねられた襖は舞台に奥行きを与えるばかりか、話の奥深さを象徴する。

    見ざる言わざる聞かざる… いや、見えざる、言えざる、聞こえざるか…の、序盤から何か不自由さを予感させるオープニングダンスも、がっちり展開とエンディングに効いてきた。

    そして話中で何度もフォーカスされる「美しさの価値基準」と「空っぽ」

    川口の…幼い頃から脳内で理想化・肥大化した「美しい金閣寺」と現実の美しさとのギャップは、強烈なコンプレックスから歪んだ価値観となった 「滅びゆく様こそが美しい」として示される。

    一方で、川口のみならず、遊女や友人が抱える…世相を反映した閉塞感、無力感が「空っぽ」と表現されている様だ。
    認識(知識・見識?)の無為さと行為(行動?)との対比の議論は普遍的に見えたが、川口の犯行を後押しする存在として使われている様だが、時代からの強迫観念の印象も感じた。

    中盤は、発言の趣旨がロジカルに理解できない台詞が度々出てきて、何となく時代掛かっているから、その辺は原作に沿っているのかな。理解できないのは自分の教養の無さだろうが、ただ、最後の最後にその印象が一変する。

    クライマックスの金閣寺放火のシーンで、同じく(色んな意味で)美しいモノとして…有為子たち遊女に金閣寺を体現させる演出は、川口の精神面に何を作用させているかが非常にイメージし易かった。

    燃え盛る中での有為子の語りは(ここは後藤さんの独自解釈/創作な気がするが)、非常に呑み込みやすいメッセージになっていた。
    空っぽなモノは美しく滅ぶしかない…と思わせる展開の中で、空っぽな遊女たちの悲痛な想いを糾合していくかんざしのシーン… それを受けて有為子(金閣)が語る川口の思想への拒絶と示唆…「もがき苦しみ、生きることこそが美しい」という趣旨は、…金閣に遊女たちが重なるからこそ、強い説得力を持ち、金閣とともに燃え尽きようとする川口を遊女たちが次々と拒絶し、コンプレックスを抱えながら(口耳目を塞いで)焼失していく様は、川口の毒気を身代わりに吸い取っていくかに見えて、それでこそ川口の「私は…生きるしか…ないんです。」がストンと胸に落ちた。

    原作との差異を知るために原作解説を色々読んだが、いずれも川口の生きる決意がしっくりこなかったので、後藤さんの原作の自分色への染め具合に改めて唸りました。"

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    2018/01/06 14:24

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