絵葉書の場所 公演情報 劇団大樹「絵葉書の場所」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    本公演は、独特な舞台美術(草月流華道家・横井紅炎女史)とその空間で展開される抒情的な物語(作・み群杏子女史)、その世界観(感)を堪能することが出来た。
    (上演時間1時間20分)

    ネタバレBOX

    舞台はカフェブランシェ、その店内は中央奥に枯れ木、上手側にカウンター・スツール、下手側にテーブル・椅子、中央手前(客席寄り)にテーブル・椅子が置かれ、本当にカフェを出現させているような独特な舞台美術。店内のいたるところに音楽や演劇のチラシが貼られている。床には枯れ葉。色々なジャンルの本が収納された本箱があるが、客が置いて行ったものらしい。中央の枯れ木には絵が掛けられている。絵はその中に描かれた枯れ木を挟んで男女が背中合わせに立っており、男はズボンのポケットに手を入れたままの構図である。

    梗概…本筋は中年男・叶光介(川野誠一サン)が営んでいるカフェ、そこに木山夏実(花房りほサン)と名乗る女子大生がアルバイトに応募してくる。光介の妻は15年ほど前に家出したが、その時、1人娘・菜摘も連れて行った。同じ名前が気になっていたが…。このアルバイトに常連客・ワタル(奥山貴章サン)が恋心を抱きストーカー紛いの行為をする。訳ありな夏実の行動がワタルの心を揺さぶるが…。自分(光介)が傷つきたくない、プライド_ズボンのポケットから手を出すまでに15年という歳月がかかった男の心の成長物語のようであった。

    この本筋に2つの挿話が織り込まれるが、その関連性が分かり難い。第1に女子高時代の文芸部有志が作った文芸誌(店の本箱から取り出す)、その書かれた言葉・文章が当時の心情を表現する。第2は、既婚の中年男性と若い女性の恋心を交えた会話が、カフェオーナーとアルバイト女子大生の関係を投影しているかのようだが…。

    物語は本筋と脇筋で構成させ、それを入れ子構造として展開する。物語も然ることながら、言葉(台詞)の意味合いや韻音の美しさ、間合いあるテンポが心地良く響くという感じである。全体的に抒情的と思えるのは、筋立てと同じように空気感というか雰囲気を大切にしているからだろう。

    公演の特長としてギターの生演奏(ゆりえサン)が言葉を優しく包み、時間の流れという間合いを伸縮させる。その目に見えない時間を表現させる効果は見事であった。さて、ブランシェとはフランス語で「白い」ということらしいが、印象は観客によって異なる。自分(心)のキャンバスに彩られたのは微風・心温まるといった心象が残った。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/12/15 18:03

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