お茶の間戦争 ~平成二十九年度版~ 公演情報 かーんず企画「お茶の間戦争 ~平成二十九年度版~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     今作はコメディーだ。そして良質のコメディーは、その作劇の意識が頗る理性的だ。今作の可笑しさに秘められた寓意と辛辣極まる批評を何処まで見通すか。これが観客としての最大の楽しみ。(深読みなどは別稿にて)

    ネタバレBOX


     下手客席側のコーナーには何らかの通信機器 上手壁際に電話 手前客席側には、椅子などでバリケードが組んであり、奥にはみずやがある。尚、兵士は中央に国境を示す棒が置かれ、この国境線を挟んで対峙する形、常に相手に銃を向けて観客には訳の分からない言葉を用いて喚き散らしているが、彼ら同士でも互いに理解できているのか否かは定かでない。但し、同一言語のようにも聞こえる。同一言語であるにも拘らず彼ら同士で意思疎通ができないのだとすると原因は、思想の違い、或いは解釈の違いなど思考の違いから来ていると思われる。
     何れにせよ今作には、二つの戦争シーンがあり、その各々は繋がっている訳ではない。メインストリームはあくまでお茶の間で展開する。このお茶の間戦争は、実際に武器を取って戦う実戦であり、TVの視聴率争いではないことを断っておく。で、この戦争の発端が何であったか? という当然の質問には、劇中の科白から答えておこう。川を挟んで東部と西部では経済格差が大きかった。西側は貧しく東側に不満を募らせていたのだが、遂に業を煮やして新たな政権を発足、東側に対抗した。格差是正を求める戦いは、終に戦端を開くに至り現在迄7年の間戦争が続いているという訳だ。舞台となるのは、東側の最前線に位置する一家の茶の間である。この家には夫婦の他に長男と二人の娘(17歳と10歳)が居て家族全員が戦闘員でもある。つまり長男は13歳から長女は10歳からそして末っ子は3歳から銃火器の中で暮らし、遊びも総て軍事的色彩を帯びたものであった為、現在では普通の生活がどのようなものであったか、良く覚えていない。殊に戦争開始時小学生だった長女や幼女だった末っ子に至っては、戦争体験以外の記憶は殆ど無いのである。つまり戦争状態が彼女らの自然状態だということだ。
     このことの意味することを良く考えて欲しい。今作は作・演出が同じ人である。そしてこの作演が為したことは、批評である。演劇作品によって他の演劇作品を批評したのである。丁度、セルバンテスがドンキホーテを書いてそれ以前の騎士道作品を批評したように。このように最高の褒め言葉を用いたのは、今作の批評がそれだけ鋭いからだ。
     今その鋭さの内実は明かさないが、是非、劇場で確かめて欲しい。

    0

    2017/12/03 13:08

    0

    1

このページのQRコードです。

拡大