月はゆっくり歩く 公演情報 シアターノーチラス「月はゆっくり歩く」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    人の嫌らしい部分(暗部)を抉り出すような物語。常識、真実として疑わないこと…そこにある漠然とした疑問、間隙を突くような問いを観客に投げかけ一気に物語に引き込む手法は見事である。
    (上演時間1時間25分)

    ネタバレBOX

    セットは廃屋内、上手・下手側にビールケースが積まれ、ダンボール箱、ゴミ袋などが散乱している。そこに次々と人が集まり、常識では考えられないことを言い合う。登場人物の1人はまーさん(浜谷優斗)のTwitterで"2番目の月が見える人、集まりませんか?”の呼びかけで集まった人々(男女7人)の奇妙にしてエゴイスト的な行動が表面化してくる怖さ。

    人々が持っている心の闇が次々と明らかにされるが、それを恣意的に利用する人も現れる。物語は見知らぬ人間関係を奇妙に描く濃密な会話劇。軽妙・淡々としたリズムから耽々とズバッと切り込んできたり、人の出入りに伴って予想を大きく越える方向に展開したりして関心を惹きつける。何が常識で非常識なのか、その鬩ぎ合いも見所。

    2番目の月が見えること、その思いを吐露することによって異常人扱いされる。そんな似非不安を抱える人達が真の目的を果たそうとした瞬間、別の意味で異常が倍加する怖さ。物語が突然違う様相をおび、嫌な人間の集まりに変化していく。自分本位で自分のことしか考えない人達が多く出ている物語であるが、抽出された”嫌な感じ”がそれで終わる訳ではなく”考えさせる面白さ”に変換されて行く。

    作・演出の今村幸市氏が当日パンフで「今回の芝居ではTwitterがひとつの役割を果たします。物語の前面には出ませんが、じつは重要なアイテムです」と記している。神奈川県座間市の事件を意識しているらしい。SNSはヴァーチャルな体験をリアルな出会いに変える。そしてサイコパスはネットワークを利用することで、悶々と悩みを抱えた人間を効率よく勧誘できるらしい。
    実際あった事件を見据えつつ、公演では共同幻想、集団催眠、狂気、魔術あるいは詐欺か。戸惑いや不安という状況を「見えないはずのものが見える人々」に設定しての会話劇の行方は…。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/12/02 14:36

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