唱劇「レコードに刻まれた唱 - Victor 春香」 公演情報 駐日韓国文化院「 唱劇「レコードに刻まれた唱 - Victor 春香」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    韓国では有名な春香伝、その実演を録音してレコードにする、その過程を1937年という時代を背景に描いた珠玉作。当時の技術では、レコードは数分しか録音できなかったらしい。春香伝は3時間を超える大作らしく、それをどう収録していくか、人々の知恵と苦労が垣間見えてくる。もっとも公演は、裏方作業よりも春香伝というドラマの魅力を伝えるという観せ方である。その意味では劇中劇と言える。
    (上演時間1時間20分)

    ネタバレBOX

    中央に集音マイク、その後ろに腰高の横長台が置かれている。収録に参加しない、出番待ちの人達の控え場所といったところ。上手側には洋楽器、下手側には小太鼓(つづみ)という和洋の楽器を奏でながら物語は展開していく。衣装は洋装・韓服など違う衣装を着て、目を楽しませてくれる。1900年代、蓄音機の普及により現場でしか聞くことが出来なかったパンソリをどこでも楽しめる大衆芸術に発展させ、当時の名唱たちはレコードを通じ、爆発的人気を博し全盛期を謳歌した。

    春香伝…府使の息子・李夢龍(イ・モンニョン)と、妓生(キーセン)である月梅(ウォルメ)の娘・成春香(ソン・チュニャン)は、広寒楼で出会い愛を育む。しかし、父の任期が終わり、夢龍は都に帰ることになる。夢龍と春香は再会を誓い合う。新たに赴任した卞(ピョン)府使は、春香の美貌を聞きつけて我がものとしようとするが、春香は夢龍への貞節を守ることを主張して従わない。激怒した卞府使は春香を拷問し投獄する。一方、夢龍は科挙に合格して官吏となり、暗行御史として潜入してきた。夢龍は卞府使の悪事を暴いて彼を罰し春香を救出する。二人は末永く幸せに…。

    時と場所は、1937年の某日・日本VICTORレコード社の録音室。当時の名唱たちが集まった。そこに集まった名優によって春香伝が演じられ、それを収録している。春香伝を一気に演じきるのではなく、場面を区切り、その合間を設けることによって収録しているという本筋に意識を戻す。春香伝のイメージは、濃密な恋愛(感情)と悪弊な社会(制度)という異なった観点から成るようだが、録音室の様子は明るくカラッとしている。

    物語の構成とそれを印象付けて観(魅)せる工夫、また演じている役者一人ひとりのキャラクターが魅力的で室内が、緊張・優雅そして微笑ましい雰囲気に包まれているようだ。当時を思わせる場面として、レコード録音完成を祝って集合写真を撮るシーンがあるが、その一枚が貴重であると思わせる。人の記憶に残る記録が出来たという達成感が、写真撮影をイメージさせる照明(照射)枠に収まったポーズに表れていた。

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    2017/11/21 18:05

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