秋来にけらし 公演情報 もぴプロジェクト「秋来にけらし」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    下平康祐、椎名マチオの両氏が紡ぎ出したテクストは、役者の熱演、心情豊かな演技によって観客の心を揺さぶる。少しネタバレするが、物語はある事情で集まった男女6人が自らの思いを語る、3話オムニバス+αの構成で描かれる。秋深まってきたこの時期にピタッリの公演である。
    (上演時間1時間30分)

    ネタバレBOX

    セットは廃屋または木材・資材置き場といった場所。そこに見知らぬ男女が次々と集まってくる。全員で7人になるらしいが、最後の1人がなかなか来ない。ある目的で見知らぬ者が集まる、そのミステリアスな(状況)説明は最後まで明かされないが、何となく「死」を想像させる。雑然と纏まりのない部屋が心の荒んだ様子を表しているようだ。描写(舞台美術も含め)による伏線の張り方は巧い。

    さて、最後の人物が来るまでの間、自分の思いを語り出す劇中劇という構成である。
    第1話は、猫が虎と思い込んで巻き起こす滑稽にして哀切漂う物語。一人芝居の熱演であるが、少し冗長と思えてしまい残念。
    第2話は、三好十郎の「妻恋行」。田舎のバス乗合所を人生の交差点に見立てた人間模様。バスを待つ間に交わされる男女の身の上話から、それぞれの苦悩が明かされる。細やかにして心情豊かな演技。子供(赤ん坊)のためにも力強く生きて行こうとする姿が感動的である。この話には全員が登場する。
    第3話は、オー・ヘンリの短編小説「最後の一葉」(邦題)。病に伏している友人を励ますために、窓から見える木の葉を”生”に準えて…。3人(女優2人、男優1人)で演じられるが、基本的には女優2人芝居で、状況と心情の変化を上手く観(魅)せていた。

    秋の夜長に語られた話を通して「死」から「生」へ。そんな気持の変化がしっかり観てとれる心象劇(これがベースにあたる+α)のようだ。「生きる」に疲れた若者たちが自らの話によって再び生きてみようと思う過程、それを直截的な表現にせず「もう少し待ってみよう」という台詞に光明が差すようだ。衒いがなく鷹揚のある俳優陣の演技が脚本の真情を伝えている。その観せ方は各語りに違い…一人激白、俚言の心情豊かな響き、美しい風景画を思わせる情調等、工夫した演出(下平氏)が素晴らしかった。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2017/11/19 14:45

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