青の鳥 レテの森 公演情報 ハグハグ共和国「青の鳥 レテの森」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    現代的なテーマをサスペンス(ダークファンタジー)風に描き、それを重層的に観せる手腕が素晴らしい。全体的に不気味な雰囲気を漂わせているが、それはテーマ(核心)そのものに言える事。自分にとっては十分観応えのある公演であった。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    舞台は、中央に階段があり上った先に黒い幕。舞台全体が黒色に囲まれ、柵というか乱伐(くい)のようなものがいたる所にある。
    物語は、知らぬ間に「レテの森」に連れて来られた人々が、そこに居る怪かしから「レテの川(通称:ゼロ地点)に行くよう命ぜられる。何のために行くのか、そこに何があるのか教えてもらえない。訳も解らず武器を持たされ、森の中を進むことになる。ただ辿り着けるのは1人で、その者が望んだものは何でも手に入るという。

    森に居る黒ずくめの怪かしは、この森の中を彷徨う魂…魂魄であることが明かされる。森は此岸と彼岸の境、黄泉の世界といったところ。レテ川はさしずめ”三途の川”といったところであろう。「ゼロ地点」そこは”始まりであり終わり”という台詞が劇中で繰り返される。それは冒頭の独白のような台詞が物語を支配しているかのようだ。宇宙が誕生し人類が生まれる、そこには「生」と「死」の繰り返しを象徴する。しかし、この世には不条理極まりない。森の魂魄は戦争によって命が奪われた者たち。

    森につれて来られた人々は、バス・ワゴン車の交通事故で生死を彷徨っている。死の淵にあって、現世ではそれぞれの人生に悩み、苦しみ生きる術(すべ)を見失っている。そんな人々がゼロ地点で見て感じることは…。生きることは「思い」でありそれを受け継ぐことで「重く」くなっていく。それを感じることが生きる勇気になる。主筋に挿話として「オズの魔法使い」「桃太郎伝説」(少し緩すぎた笑い)等を取り込んでいるが、それは寓意を意識させる。
    現実と黄泉のような世界をダイナミックに結びつけるのは、アナグラムの機知によるものだろう。

    テーマは「生きる」であり、合せ鏡として「反戦」である。敢えて森に連れて来た人々に殺し合いをさせ、憎悪・復讐という負の連鎖を通じて愚かさを悟らせる。一方、悩み苦しみに中に生きる勇気が備わってくる。他人任せのような”祈り”ではなく、自らが考え行動する、その先に”希望”が見えてくると…胸に迫る台詞の数々が、両手の指先から零れ落ちてしまうのが勿体ない。

    骨太い脚本、それを重層的に構成して観せる。役者はそれぞれのキャラを立ち上げて物語の世界に引き入れる。もちろん演技同様、ダンスパフォーマンス(アンサンブル)も魅力的であった。「ハグハグ共和国」らしい印象付けと余韻…堪能した。
    次回公演を楽しみにしております。

    0

    2017/11/06 17:58

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大