しゃべらない人 公演情報 劇団東京ドラマハウス「しゃべらない人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    しゃべらない人はいると思う。何となく苦手な人とは話をしないかもしれない。しかし、本公演のしゃべらない人には違和感がある。この設定だから2人の激白には迫力があり面白いのだが、そもそもの設定に無理があるような気がするし、何とか整合出来るような設定と展開に出来なかっただろうか。
    (上演時間1時間50分) 【Bチーム】

    ネタバレBOX



    セットは、凹字を逆にしたシンプルな作り。窪んだスペースに深夜TV番組「からくりサーチ」に登場するコメンテーターが座る、そのTV画面とこの家の庭の両方をイメージさせる。中央上段には横長のテーブルが置かれ、横一列の食事風景を見せる。映画「家族ゲーム」(森田芳光監督)のように顔を合わせないという不干渉という歪な家族像が見えてくる。夫婦間で直接会話をすることが無くなってから25年が経つ。それには理由があり、それをTV番組の力を借りて明らかにし夫婦間での会話を取り戻すという物語。しかし最大の疑問はしゃべらない相手、その設定に違和感がある。

    夫婦が直接会話しなくなった理由は、夫・妻の子供の頃のトラウマが遠因のようだ。その問題は長男(25歳)が生まれたことによって顕在化する。夫は子が生まれたことによって妻が育児に夢中になり、自分が置き去りになった気持ち。母親を亡くした、その喪失感が妻の育児に重なって見える。妻は子供の頃、弟の面倒を見ていたが、その弟が亡くなったことを自分のせいだと思い、悔悟の気持に苦しんでいた。わが子は死なせない、育て上げるという気持が強く、夫を顧みる余裕がなくなった。

    この2人の激白が曖昧模糊とした物語を引き締める、最大の見所であろう。同時に大きな疑問が生じる。長男が生まれた後、直接の会話なしに現在・高校生の娘(17歳)が生まれている。そして原因を聞いた長男の気持は如何であろうか。自分の与り知らない理由で、両親が会話をしなくなる。そんな後味の悪い感じがする。公演としては”誰もが抱く苦手意識”を身近な存在で描いており面白いのだが…。

    深夜TV番組で原因解明の様子を放映する。その番組構成として各ジャンルのコメンテーターがその知識を交え解説する。第1回目は心理学者、動物学者、お笑い芸人、第2回目はお笑い芸人の代わりに旅行コーディネーターが登場する。それぞれの専門分野のウンチクを面白可笑しく聞かせる。TVという媒体を入れることで客観化し、さらにコメンテーターという第三者をもって距離を置く。この間接伝達こそ、現在の夫婦の会話そのものであろう。本公演の「しゃべらない人」は表層的には夫婦の会話であるが、TV視聴や電子媒体でのゲーム等に夢中になっている現代人に向けられた問(核心)のようにも思える。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/11/04 09:51

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