謎の変奏曲 公演情報 テレビ朝日「謎の変奏曲」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    二転三転、舞台の謎が次々と変わる。たった二人の出演者で2時間半、だれることなく観客を引っ張っていく。超絶技巧の見事な戯曲だ。
    エニグマと言う曲が謎を象徴する音楽になっているが、音楽そのものは象徴的意味しかない。象徴するのは「愛」だ。北極を望む北欧の寒村に住むノーベル賞受賞の老作家(橋爪功)を訪ねてくる、いわくありげな新聞記者を名乗る30歳過ぎの男(井上芳雄)の二人芝居。ただの取材と思っていると、二人の関係は刻刻と変わっていく。一幕の終わりで、二人の関係が容易ならぬ愛の葛藤を含んでいることがわかる。そこからの二幕の展開がうまい。

    ネタバレBOX

    二人の間に置かれた老作家の新作に収められたかっての愛人から寄せられた12年間にわたる愛の手紙を巡って、次々と新しい真実が語られ、二人の間の関係も彼らと深い関係となった女性との過去も彩りを変える。そのサスペンスがこの芝居の見どころなのだ。二人が、姿を見せない第三の登場人物の女性に託した愛の姿がこの劇のテーマだ。
    展開は実にうまい。事実が開いていく構成もよく計算されていて見事なものだ。面白い。芝居見物にはそれで十分、と言ってしまえばそれでいいのだが、ないものねだりをすれば、その「愛」はいささか作りぎで、真実性に乏しい。20年前に書かれて以来、日本でも三度目の上演で、老作家は仲代達矢、杉浦直樹、と言った癖のある「名優」がやっている。つまりはそういう俳優の力でこの作品の真実は担保されているのだろう。今回は橋爪功。うまい役者で、今までの役者に軽みを加えてさすがである。対する男に井上芳雄。劇場はこの俳優のフアンが詰めかけているようだが、残念ながら、長い間愛の谷間で過ごした男の苦悩が伝わってこない。表現されてもいない。橋爪につられたのか、軽すぎる。ただの謎解きエンタメ劇ならいいのだが、この芝居はいささか技巧に走りすぎているとはいえ、人間の「愛」のドラマである。観客のご機嫌伺いのような芝居もあり、そこが残念だった。

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    2017/09/21 22:13

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