イジメがあったという事実は確認できませんでした 公演情報 teamDugØut「イジメがあったという事実は確認できませんでした」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    初日観劇…面白い公演という事実は確認いたしました。タイトル通り「苛め」を取り扱った内容であるが、その原因・理由となったことの問題の深刻さに胸が痛む。
    ”神は細部に宿る”という言葉を聞くが、この公演舞台セットもしっかり作り込んでおり、視覚から物語に引き込んでいく。そして物語が進行する中で、情景が鮮明になり、また観客に心象形成させる空間になり、いつしか装置と内容が溶けて現実と想像が混然一体となる。
    冒頭、6年に一度しか咲かない蘭(ラン)の花を持ち出し、その隠された花言葉のようなものが、この公演の根底にあるテーマのようだ。苛めを扱うことから、公演では実際頭を叩かれるシーンがあったが、自分は別の意味で頭を叩かれるような衝撃を受けた。

    なお、気になることが…。
    (上演時間1時間40分) 2017.9.2追記

    ネタバレBOX

    この劇場は客席に段差があまりないため、演技でしゃがむシーンがあると後列からは観難くなると思う。今回も前3列はベンチシート、後3列が椅子席だった。自分は椅子席の最前列に座ったから観えたが…。舞台(板)にしゃがむ又は下手側のパソコンルームのシーンは観難かったのではないか。演出で工夫の余地があるのではないか。神も細部を見たいと思うのだが…。
    また、初日で緊張していたかもしれないが、台詞を噛むことが多かったのが少し残念。

    セットは、サクラ小学校の職員室。上手側に教師の机、ホワイトボードのスケジュール表、下手側には教頭の机。下手の客席寄にパソコンルームをイメージさせる空間。職員室と分からせるため壁で仕切られているが、そこには窓があり、その奥にもリアル感を持たせていた。

    梗概…生徒の一人が歩道橋から落ちた。自殺は事故か判然としないが、重体とのこと。この生徒は苛めにあっていたという噂もあり、それを苦にした行為ではという憶測が教員、職員室にいたPTA役員の母親の間で取りざたされる。生徒は父親の職業の関係などで転校を繰り返し友達が出来ない。この小学校では親友が出来て、とても喜んでいた。しかし、転校の理由は福島県双葉町の出身ということ。東日本大震災により放射能の影響を気にする子供の親達。友達が出来ても親の拒否反応が子に伝わる。転校生の嘘と素性を自分の子へ話した。その結果、嘘を言われたことが悔しくて苛めが行うようになる。親は苛められていた子が日記を書いており、それを回収したく学校に来ていた。これを本筋に、脇筋として別のPTA母がわが子が私立中学受験に有利になるよう画策(モンスターペアレンツ風)、ノートを回収しようとした両親は夫の出世のため押し売りボランティア。さらに苛めを受けていた子が脅されネット詐欺を働き、刑事が学校へ乗り込んでくる。
    それに対する教師の対応は、自身の保身のため「いじめがあったという事実が確認できなかったことにする」というもの。苛め=学校(教師)の落ち度は、インターネットでのバッシングに晒され、地位、職を失いかねない。現実の社会でありそうな対応。職員室での苛めがあったか否かの確認は、一喜一憂、漂流するかのような議論。苛めがあったことを示唆するような出来事を見逃し、対応も自分の都合・勝手なことばかり。

    蘭の花が咲くと不吉なことが起きる、その言葉の重み。今日にも咲きそうな…そして6年前に咲いたのが、2011.3.11という。東日本大震災から6年が経つが、その復興は進んでいるのか。既に過去のことのように忘れてしまっている自分に衝撃を受けた。単なる「苛め」ではなく、社会的な出来事を契機にした、世間の偏見へ鋭く迫る内容。

    この公演は、主人公(宮内千奈サン)の非常勤教師(正教員でない)と苛めを受けていた生徒の1人2役の熱演が良かった。当日パンフでは初めての主演と書かれており、その重責を果たしたと思う。他の役者も教師、PTAの立場など、しっかりキャラクターと役割を体現していた。すべての役がはまり役のようでバランスも良い。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2017/09/02 12:59

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