四色の色鉛筆があれば 公演情報 toi「四色の色鉛筆があれば」の観てきた!クチコミとコメント

  • 細密で確かな描写力
    豊かな発想力もさることながら、その描写力に瞠目。

    それぞれの作品に時間への大きな俯瞰と繊細な内面への描写力を感じました。

    時間の曖昧さのなかに確かなリアリティがあって・・・

    描かれる世界に潜んだ高い精度と密度に息をのみました

    ネタバレBOX

    4つの作品それぞれに秀逸な発想があります

    (あゆみ)
    記憶の断片が次々に浮かんでくるように、子供のころの思い出や今の生活が一本の線上での事象として描かれていきます。家出の記憶、友人の家で遊んだこと、久しぶりに出会ったこと、働く今・・・。照明が当たる部分にあわられれる連続した意識の裏側で、いろんなことが循環していく。
    そこに一人の女性の内面が浮かび広がる。概念ではなく、まるでスケッチのように、女性の意識と無意識の領域が描かれていく感じ・・・。



    (ハイパーリンくん)
    自分の立ち位置から、ミクロとマクロの世界観が広がっていく。そしてその中心にいる自らの浮遊感が観客にやわらかく降りてくる・・・。
    リズム感に潜んだ法則性に沸き立つような厳然さを感じ、劇場空間全体をつかったその広がりの表現に浸潤するような浮遊感がやってきます。
    形容矛盾ですけれどシンプルで細密な曼荼羅の中に身を置いたような気持ち。

    そして、重なるように生徒が先生となり、思索が受け継がれていく時間軸があって、そのなかで空の色の描写がすっと観客の今を満たしたような・・・。

    (反復かつ連続)

    4人姉妹と母親の朝の時間を一人ずつ重ねていく・・・。
    そこに生まれた朝の喧騒のなんと瑞々しいことか・・・。
    下世話な日常が何か心地よくて、途中の音楽による調和に吹き出しながらも、不思議な家族のきずなを感じて・・・。

    5人の登場人物が描かれたあとに音だけの反復があり・・・。
    宴がおわったような空間のその先にあるものに心を優しく締め付けられました。最後にお茶を飲む老婆の表現が秀逸。

    その姿に彼女が過ごした日常の積み重ねというか人生の道程が垣間見えて・・・。

    ある朝の家族の風景へのいとおしさと彼女の過ごした時間への畏敬のようなものを同時に感じて・・・。


    (純粋記憶再生装置)
    別れから出会いのころにさかのぼっていく記憶の緻密な描写。ク・ナウカのように語り手と演じ手がシンクロして作り出す世界に、心に浮かぶ風景の細密な描写があって・・・・。役者の動きは観客に記憶の移ろいを感じさせるほどにしなやかで動作と声の主の分離に記憶と現実のやわらかな乖離があって・・・。

    演じる法則が時間をさかのぼるに従って崩れていくなかで、記憶のあいまいさがふくらむ。無意識に為される自らの記憶への干渉を感じたりもして・・・。

    舞台装置となる白い紙がしっかりと機能していました。
    実存したはずの楽しい時間に踊る、雪に見立てた白くなにもかかれていない紙に、たまらないほどの愛しさがやってきて・・・。

    ひたすらにその世界に引き込まれ、その透明感をもった切なさに言葉を失いました。

    4つの作品に共通しているのは、心の窓からながめた時間の流れで作品が編まれていること。
    その流れは絶対的な時間の概念で観ると、ダリのふにゃっとした時計を想起させたりもするのですが、でも、心に去来するものの描写としては精緻でしなやかなリアリティを持っていて。

    シュールリアリズムというのは言葉の使い方が違うのかもしれませんが、現代絵画に通じるような鮮やかな時間の切り口と、その発想をささえる精緻な演技にひたすら瞠目。

    見終わった後心が満たされて、しかもその世界がさらに大きくふくらみつづけるような作品群でした。



    0

    2009/01/28 07:29

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大