「漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)」 公演情報 「漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     北海道出身者で結成された道産子男闘呼倶楽部の今公演は、作・演出のニシオカ・ト・ニールさんも、会場であるSPACE雑遊のオーナーも北海道出身というこだわりぶりです。開場中の客入れ時間が心なしかアットホームで、好感をもって幕開きを迎えることが出来ました。舞台との心の距離が近くなったせいか、中年独身男性2人のダメっぷりが早い段階から可愛らしく見えて、進んで声を出して笑えることもありました。

     出演者の犬飼淳治さんも津村知与支さんも舞台でよく拝見する俳優で、演技が達者であることは織り込み済みでした。お二人がいつもより魅力的に見えたのは、女性であるニシオカ・ト・ニールさんが男性像を俯瞰して描いてくださったからではないかと思います。熱さも冷静さも、かっこよく見えるところで止めると、ナルシスティックになって鼻に付くものです。弱さ、愚かしさを過剰と言えるほどにさらけ出す演出に、俳優が本気で応えたから、性別を超えて人間の地力が溢れ出たのではないでしょうか。現代口語の会話劇に演劇的な大仕掛けも用意されていて、お芝居ならではの楽しみを味わえました。

    ネタバレBOX

     北海道の大学を卒業して今は東京で求職中の金平(津村知与支)は、嫌々ながら清掃のアルバイトをしています。ある日、浮浪者と思われるむさくるしい男性が金平の仕事場の近くに居座っていたため、注意をすると、なんと高校時代の同級生の内藤(犬飼淳治)でした。2人で飲みに行き、金平は「自分は大企業に勤めていて、恋人もいる」と嘘をつきます。気のいいホームレスの内藤は金平の話を素直に信じるので、金平は大卒の自分よりオツムが弱そうな内藤を気に入ります。

     金平が一人暮らしをしている部屋に内藤が転がり込み、2人の共同生活が始まりました。内藤は会社の金を横領したという濡れ衣を着せられ、前科(たぶん求刑1年、執行猶予3年)があるため再就職ができません。米粒に筆で絵や文字を書いた「コメッセージ」という商品を路上で販売しています。内藤は金平に1泊200円を支払い、家政婦役を買って出て、パソコンの使い方も覚えて、着々と成長していきます。

     やがて内藤に20歳以上年下の恋人ができました。報告された金平は大きなダメージを受け、立場が完全に逆転します。金平の取り乱しっぷり、そしてそれを隠そうとする慌てっぷりがなんとも情けなくて滑稽です。「ダブルデートをしよう」と誘う内藤の純朴さが、かえって残酷に映ります。そして金平は、ハローワークの窓口の女性に「彼女になってくれ」と迫り、警察沙汰を起こすまでに追い詰められるのです。2人の男性を徹底的に対照させるのが効いています。
     
     とうとう金平は内藤に、何もかもぶっちゃけて告白します。そのあたりから、舞台上に並べられていた漫画や服などの家財道具を、2人の俳優が自分たちで片づけ始めました。しっかり建てられていた棚がキュっとたたまれるのは、ちょっとしたイリュージョンでしたね。何もない空間に立つ2人は、金平と内藤であり、津村さんと犬飼さんでもありました。ありのままの個人として舞台上に立つ人は強いです。そして強さは美しさだとも思います。

     題名の「輓曳(ばんえい)競馬」については、最後の最後に一言のセリフでしか出てきませんでした。そういえば賭け事もしない2人でしたね。馬が引くソリの重さは、40代独身男性のプライド、または人生そのものなのかもしれません。重荷を捨て、解放された彼らの前途は洋々とは言い切れませんが、覚悟が決まった笑顔が清々しかったです。

     部屋にずらりと並ぶ漫画は「マカロニほうれん荘」「銀牙-流れ星銀-」「ドラゴンボール」「三国志」など、40代の私が懐かしいと感じるものが多く、比較的新しい「トリコ」もありました。“男子”らしい感じです。「BEATLESの青版LPなら2万円で売れる」的な話題も懐かしかったですね。

     ニシオカ・ト・ニールさんがハローワークの窓口の女性と、金平の清掃バイト先の乱暴な同僚を演じていらっしゃいました。全然違うタイプの女性を演じ分け、アクセントとしても効果的だったと思います。

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    2017/06/18 13:19

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