空焚き 公演情報 劇団カツコ「空焚き」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     全面黒の板上にやや右肩上がりに組まれた平台や箱馬。観客席側はマンションのベランダ。この窓辺からは、近隣の工場の高い煙突が見え、風下に当たることが多いこのマンションには、臭気が漂ってくると、さくらは言う。

    ネタバレBOX

    臭いがあるから原発関連ではないが、人間が作り上げた技術の齎す害という意味では共通項がある。而も空焚きというタイトルや締め切った部屋で暮らす「主婦」、さくらの精神的崩壊をも考慮に入れるなら、原発人災の検証として創造的に構築し、且つ想像力的にマッチングさせた方が、更に刺激的且つ風刺の効いた作品に仕上がったであろう。
     何れにせよ、結婚詐偽師、さくら(かな)の虚ろな心象に映りこむもの・ことが本当にあるのか否かについて、劇団の傾向もよく分からないまま今作だけで即断することはできないが、原発人災や人間の作り上げた技術の齎した虚ろの抱える退廃だけは確かなものであるように思われる。
    オープニングのケンジの独白にリアリティーが無いと感じたが、物語の進行につれて、これはこれで良いのではないかと考えるに至った。何故ならここではケンジの受け身の姿勢を強調する今回の演出で良いと思えるからだ。ところで、随所に挿入されるボレロの使い方もユニークである。通常、ボレロが掛かるシーンでは感情を最大限盛り上げてその高揚と共に音響も高鳴ってゆくのだが、今作では掛かる度にその意味合いが異なる。而も総てに共通しているのは、通常の用い方の箍を外すという方向性である。即ち、空虚に飲み込まれてゆく総ての人間的努力の空しさを補完するような形で用いられているのである。考えさせる作品である。

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    2017/05/07 23:50

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