いつまでの森 公演情報 劇団演奏舞台「いつまでの森」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    本公演はテーマ性を強調した物語。「劇団演奏舞台」は試作という公演は観てきたが、今回はアトリエ:九段下GEKIBA開設5周年記念(公演77)だという。
    パンフレットには、主宰・代表の浅井星太郎氏が「あの日-2011年3月11日。大震災・原発事故から6年が経ちましたが、未だに真実は「闇」の中…。」と記している。この「闇」を「太平記」の中にある「広有射怪鳥事(ひろありかいちょうをいること)」に想を得た本作は、今の日本の混沌とした状況を隠蔽(闇)として描く問題作のようだ。

    登場人物はわずか5人。問題となる地域に暮らす人々と、この地域に興味を持った研究者の目を通して「いつまでの森」に潜む闇_その社会背景を透徹した視線の先は将来の日本の行方を見据えるようだ。
    (上演時間1時間35分)

    ネタバレBOX

    上演前、劇中に流れるラジオ放送(ドリームウェーヴ・架空)が重苦しくなりそうな雰囲気を和らげる。上演前の放送…「男性が女性に大事な話がある。女性は愛の告白またはプロポーズと勘違いしたようだが、男は夜景の光の省エネ化の夢」を語る。その思いが劇中になると一転して環境(自然)破壊の様相へ変わる。実に巧い導入の仕方だと思う。

    舞台セットは、特別自然保護区域の名目で「いつまでの森」を追い出された まりも(文月一花サン)が経営する「MARIMO」という飲み屋。限られた空間に、店構え(カウンター、ボトル棚)・赤提灯・店前のテーブル席などを作り、雰囲気は十分醸し出している。

    梗概…ドリームエナジーという会社が自然環境保護の名目で「いつまでの森」に住んでいた人々を追い出す。その地から離れられない人々の交流の場が、この居酒屋。また、まりもの同級生・弥生が「いつまでの森」ツアーを勝手に企画し、それに申し込んできたのが鳥越九郎(劇中では「取越し苦労」とからかう)という研究者である。この男、某研究所に勤務していたが、その研究所の研究内容に疑問・恐れをなして辞職したが狭い業界ゆえ、再就職がままならない。この人によって「広有射怪鳥事」に出てくる鳥”以津真矢(いつまで・いつまでん)”の姿、形、逸話が語られる。
    さて、研究に用いられた餌によって成長は早いが、飛ばなくなり死に至る。森の中は鳥の死骸だらけ、何が起きているのか?情報の隠蔽、その闇には軍需産業との噂も…。

    いろいろな伏線を張り納得度の高い展開である。上演前のラジオ放送が印象深い。マスメディアも政府の広報になり、個人的感情は国の思惑ですり替わり、または掻き消される危惧。
    劇中での台詞…「これから」と「それから」という鳥が出会うと、世界が裏返るという迷信のような話。もっとも言語として「今」から「次」へ繋がること、という将来・希望という暗示だろうか。前向きなメッセージと受け止めれば、震災後に(地方)自治体同士の横のつながりが自主的・自発的に行われるようになったと聞く。その意味で中央の統治に変化が…。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/04/19 18:21

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