家族の神話 公演情報 劇団 でん組「家族の神話」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    切美な毒を盛り込んだ悪魔的虚心犯、まんまと騙されるような。
    物語の展開は分かり易いが、その心の奥底まで届くような印象付け。そのトラウマが生んだものは…。
    本公演は、母親からの虐待を受けながらも生き抜いた兄妹が、新たな悲劇と闘い、家族の絆を自らに問い力強く生きていく、そんな物語。その展開はサイコサスペンスのようでラストまで目が離せない。

    (上演時間1時間30分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、中央奥に古い大きな机、その前(客席寄)に応接セット、上手側に別空間(警察取調室イメージ)としてスチール机とパイプ椅子。物語が動く程度の作り込みで、観客が色々想像しやすいような心象形成に優れている。

    梗概…4歳の最愛の娘が死んだ。その死が殺人であると主張する父親。それも自分の妻(死んだ娘の母親)だと言い、警察に訴え続ける。その挙句、妻に脅迫状を送りつけるという常軌を逸脱した行動をし逆に警察に事情聴取されるはめになる。
    この父親、男の妹が弁護士で事件、事故を調査し始める。実はこの兄・妹は実の母親から虐待された過去を持ち、兄の庇い立てもあり生き延びてきた妹。頑なに、妻が娘を殺したと信じる兄が妻を追い詰めようとする。兄の異常な行動に不安と恐れを感じ始め、心の傷と闘いながら、虐待の連鎖に苦しむ妹。兄の頑なさが、妹の日常生活を侵食し、家族が崩壊するようだ。二転三転しながらも事件の真相に迫っていく母と娘。次第に明らかにされていく驚愕の真実は…。

    母と子、家庭内という一種の密室で行われる虐待という悲劇。その問題に真っ向から向き合い、人間の尊厳と希望を謳いあげた感動作。物語は表層的には溺死したのは事故か事件かというミステリーと、兄妹が親から受けた虐待による人格崩壊を思わせるようなサイコサスペンス、という2つの構成で成り立っている。妹の娘(姪っ子)が母親と対立するような意見(伯父の子は「事件」)を述べ、兄の主張に肩入れする。この娘の存在が物語の鍵となり…。

    ミステリー部分は、順々に「事故」か「事件」なのか謎解きを行い、納得性を持たせる。一方、サイコサスペンスは急転直下の展開で衝撃的なラスト。その見せ方はとても印象的である。物語は二分割するような構成に思えるが、根底には人の心に棲む魔物を観るようだ。親からの虐待で居場所がない兄妹が、寄り添い生きてきた過程。そこには怒りの捌け口のない無情さだけが残る。妹は自己防衛のための別人格を作り出す。遣る瀬無い思いを漏斗から狭めて悲しみの泪と血を注ぎ込むように収束を見せる秀作。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/04/01 09:54

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