赤い金魚と鈴木さん~そして、飯島くんはいなくなった~ 公演情報 九十九ジャンクション「赤い金魚と鈴木さん~そして、飯島くんはいなくなった~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    見事なまでの不穏・嫌悪という負の感情を抱かせる怪作。それは単にヘイト・クライム(憎悪犯罪)でないところに真の怖さを覚える。当日パンフには、3組の家族が紹介されているが、その表記は夫1.2.3、妻1.2.3などという数字であるが、劇中ではしっかり姓・名で呼んでいる。この長いタイトルの種明かしになるため、敢えて形而上の表記にしているところに作者(土屋理敬氏)または演出家(後藤彩乃女史)のしたたかさを感じる。
    (上演時間1時間35分)

    ネタバレBOX

    物語は、ホラーでもサスペンスとも少し違うし、その描き方もスプラッターでもバイオレンスでもない。別人として生きる男、その家族(男の弟)の苦悩。過去を隠して生き続けること、その血脈への慄きが切ない。また若い女(後妻)の心の奥底にある狂気が静かに牙をむく。それは決して社会や家族、周囲の人達に対する怒りや不条理に対する抑制された感情から生まれたものではない。その不可解さは「解らない」という台詞の凝縮されている。

    舞台美術は、部屋の一室(リビング)で、3組の家族の住空間を同じに見立てつつも、その異空間をしっかり演出している。フローリング、そこにハの字型に3壁面を作り、それぞれの間を出入り口としてその先に他の空間があることを想像させる。その壁前に食器棚、飾り棚(上には電話兼FAX)が置かれている。上手側にソファー、中央にダイニング・テーブル、椅子がある。3組の家族は、ハウスクリーニングを営む家族1、同じマンションに住む2組の家族2・3(息子同士が中学の同級生)。そして家族1に住み込みで働いている男の弟が、家族2の夫という関係で物語は展開して行く。
    このハウスクリーニング店と分譲マンションの2つの場所で流れる時間と運命…知ってしまった衝撃の事実。これから先の人生をどう乗り切っていくのか興味を惹く。

    以前マンションで猫の惨殺事件が起きている。そして家族2の部屋ベランダに同じように猫の屍骸が...。それを契機にハウスクリーニング店で働く男の過去、家族2の夫の苦悩が露になり、夫々の家族崩壊が始まる。意外な人物が犯人でその動機が不可解。それだけに不気味で後味が悪いが、逆に言えばそれだけ脚本、演出そして演技が巧みということだろう。

    なお、少しネタバレになるが異空間であるがハウスクリーニングの話とマンションでの話は時間軸が1年ずれている。またタイトルとサブタイトルの名字は犯人を示唆している、という凝らしたもの。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/03/02 22:05

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