SUBLIMATION-水の記憶- 公演情報 護送撃団方式「SUBLIMATION-水の記憶-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2017/02/15 (水)

    座席2列

    『あなたのその曖昧さ、全面的に愛してる。』このセリフを吐くのは、誰もが想像するように主人公の曖昧な女性である。しかし、このセリフがどこで誰に吐かれたのか、そのシーンにはかなり驚いた。

    ”形を壊すスチームパンク LOVEサスペンス!!”という煽り文句。

    この舞台は、登場人物同士をたくみに裏切らせながら、その上で観客をも少しづつ裏切っていく。それも、特定の登場人物と観客しか知らない形で。登場人物と観客がある種に共犯関係を築かせるのだ。これが「形を壊す」。

    まさに設定は、スチーム満載の「スチームパンク」。

    説明書きを読んだ観客は、割り切りたい男と曖昧な女が愛し合うという意味で「LOVE」を想い観劇に臨むのだけれど、この「LOVE」は全く私たちの想像を超えるものだった。

    そして次々と明かされる事実と、暴力描写や30年前の回想シーンは上質の「サスペンス」。

    何のことやらと思った説明書きが全て、きれいに舞台内容をなぞっていることには、ほとほと感心せざるをえない。確かに「真実なんか蒸気の向こうに消えていく。」のだから

    また、舞台装置も見事。確かに狭い。しかし、その狭さも舞台を立体的に見せることや深い奥行きを感じさせること、そしてトンネルをくぐり時間経過を見せることで無限の広さを感じさせる。
    その上で、ダンスシーン、アクションシーン、そしてモブシーンが、最初狭いと感じさせる舞台に収まるのは、演出と稽古の賜物だろう。その上それぞれのシ-ンの出来栄えも高品質だ。

    本来、舞台では難しい回想シーン。舞台装置の大掛かりな変更(例えば、歌舞伎などの回り舞台)が必要と思われる過去への移行も、人物配置の妙ででスムーズに行われる。だから、舞台は停滞することなくどんどん進んでいく。

    舞台開演時の演出も気が利いている。まさに【舞台への誘い】、観客席がこの街との地続きとなり、舞台と観客の一体化を感じさせてくれる。

    まさに観るべき舞台!!!

    追伸:スチームのせいか、結構、劇場内が冷えます。、ひざ掛けを貸与してくれますの   で開演前にいは借りておきましょう。



    ネタバレBOX

    『私の体の60%は世界で最も曖昧な物質で構成されているんです。』
    これが水であることは、舞台のタイトルからも自明の通り。ただ、この水を、スチームであったり、街をめぐる水道管内の水であったり、そして人間に含まれる60%にまで拡張して、そこに宿る記憶の物語として舞台化したお手並みは見事の一言。

    物語を貫くウェンヤンの存在も街の混沌を体現するように魅力的。
    ウェンヤンの分裂症的な性格は、あの街にあった水の記憶に由来するものなのか。
    優等生的だが、曖昧なことを愛し、仲間を裏切り、兄を蔑み、○○を偏愛し、自らの愛の証明のために自傷する。自らの存在の前に、意図のあるなしに拘わらず全ての者をひれ伏させる。しかし、そんな彼女は、街の誰からも愛される(あるいは嫉妬される)存在なのだ。
    彼女は割り切りたい男をも飲み込んでいく。

    水道管に水を送り続ける、【存在しなかったのにすべてを見ていた】ラウ、スチームの中を時空間を渡るように舞い続けるフーグー。彼、彼女は水の近くにいて全てを司っていたのかもしれない。彼らは歌わない、たった2人の沈黙のコロスではないのか。ただ1つ、30年前に嫉妬に駆られてラウがとった行動のみが、自らの役割を逸脱するのだが。

    なお、1つだけ言わせてもらうと、30年前の事件の際にリーと組み合う人物の素性が判らないのが消化不良。クインに暴力を振るっていることから、親なのか夫(ないし恋人)なのか。その人物描写を捨象したことは正解だったけれど、どうにかしてすっきりさせて欲しかった。(どこかで判るようになっていたのかな?)

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    2017/02/17 11:27

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