ハムレット 公演情報 ラゾーナ川崎プラザソル「ハムレット」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    本公演は、ラゾーナ川崎プラザソルの開館10周年記念公演の第二弾(第一弾は「マクベス」)として上演されている。
    「ハムレット」…シェイクスピア四大悲劇の1つ。その作品群の中でも台詞に関しては有名であり、翻訳も色々ある。明治期の坪内逍遥から現代に至るまで翻訳家が原文の意を汲み取るよう腐心している。
    本公演でも当日パンフで松岡和子女史が「kin(姻戚関係)とkind(親子・兄弟などの肉親の情)とが同じk音で始まることとか、縁語であることをもっと打ち出す」ことを思っていたと。そして新たな表現は、劇を分かり易くするだけではなく、物語そのものの魅力を引き出していると思う。日本のシェイクスピアの翻訳者は男性が多く、女性は少ないと言われている。昨年亡くなった蜷川幸雄氏は1998年以降、埼玉県の彩の国さいたま芸術劇場でのシェイクスピア戯曲を松岡女史の翻訳を使用して上演していた。
    その翻訳劇による本公演の魅力は…観応えがあった。
    (上演時間2時間15分 途中休憩10分)

    ネタバレBOX

    舞台セット…素舞台であるが、張り出した床面は赤を基調にしており、奥壁にあたるところは白い幕にスリット。その何か所かにある切れ目から自在に出入りし場面転換を演出する。その多空間処理は物語の展開を途切らすことなく観客(自分)の集中力を惹きつける。また幕の上部には白いシャツが掛けられているが、何を意味しているのか判然としない。全体的な色調は赤・白という、一見対極のようであり豪華な(ダンス)ホールを思わせる。

    梗概…夜の城壁にあらわれた亡き父王の亡霊は王子ハムレットに、現王 クローディアスが自分を殺害し王位を奪い、ハムレットの母でもある妻の ガートルードを王妃にしたことを語る。亡霊の言葉で、父の死因を知ったハムレットは 復讐を誓うが、なかなか実行出来ない。その躊躇と懊悩が交錯しハムレットの苦悩が表現される。一方、オフィーリアとの恋物語が純愛のような狂気のような展開も目が離せない。

    さて有名な台詞…「To be,or not to be,that is the question」も色々な訳がある。それは時代とともに言葉が変わること。翻訳者の創意工夫によって作品の世界が広がっていくことらしい。松岡女史にしても先に書いたk音は従来の訳に変わり「近親関係は深まったが親近感は薄まった」にしたという。物語の解釈に沿って原文の意を表現しようと努めているようだ。女性の視点を踏まえた翻訳で、女性が男性に対して過剰な敬語は話さない。そこには自然な言葉遣いが聞かれる。それゆえ、現代風で分かり易いのではないだろうか。

    役者陣の演技はバランスよく、その軽快なテンポは心地よい。
    感じ入ったのは、オフィーリア(逢沢凛サン)の純真な気持と錯乱狂気した姿の演分けが素晴らしかった。特に仰臥し顔だけを客席に向けた時の目の虚ろさは見事。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/01/30 17:55

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