カミサマの恋 公演情報 ことのはbox「カミサマの恋」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    この物語は、年や地域によって違うかもしれないが、春の彼岸入りから彼岸明け(3月中旬から下旬)にかけての話(出来事)を神事と心事を融合させたような不思議なもの。舞台が暗転・明転するたびにカレンダーの日に×印が付けられ、日の経過を表すなど丁寧な描き方である。
    (「Team箱」 上演時間2時間10分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは大部分が和室であるが、上手側は増築した応接間である。棚には茶器などが並ぶ。中央奥は二階へ上がる階段が見える。下手側奥は仏壇、客席よりは床の間のようで祈り際に使う太鼓が置いてある。それ以外に樽、丸卓袱台、座布団など生活感を出すように工夫している。舞台と客席の間は廊下であろう。

    梗概…春が感じられるようになってきた3月の津軽。舞台は「竜神さま」なる神の声を聴いて、土地の人の悩み事に助言する"カミサマ"遠藤道子(木村望子サン)のもとへは嫁姑問題、息子の受験、息子の結婚相手探しなど身近な悩みごとを抱えた人びとが訪れてくる。相談者の話を丁寧に聴き、神様の言葉として助言し相談者の心をほぐしてゆく。TV出演をした関係から東京からわざわざ来る者もいる。その道子には銀次郎という息子がいる。何年も連絡がなかった銀次郎がある日突然あらわれ、道子に頼みごと。銀次郎は、近所の人々と違って客席(廊下)側から登場し、自分の家であることを印象付ける。その銀治郎は娘・しのぶとの確執もあり、道子の家でも悩み事は尽きない。

    恐山のイタコは死者の声を聴く「仏おろし」で知られるが、津軽では、それに似た”カミサマ”なる存在があるらしい。民間信仰で、迷信と思う人もいるだろうが、家族の災厄や悩みなどを聴き、神様におうかがいを立て助言をする役を担っている。いわば人知の及ばない”神の領域”を設け、その声をうまく利用して、ささくれだった人間関係を修復を図る。ウソかマコトか、あいまいな部分をあえて残して、心を和ませる生活の知恵といったところ。

    道子に弟子入りしている下条由紀(廣瀬響乃サン)も訳有りのようであるが、全部を描き切らない。その余白は観客の想像する領域として残す、その余韻が巧い。
    役者陣はそれぞれのキャラクターを立ち上げ、バランスも良い。その土地の言葉(方言)を喋ることで土着信仰の要素をしっかり伝える。
    死という掴み様のないものに謙虚に向き合っている。その一方で生きている人の悩み事、それも身近な生活にあるところ。その様相を丁寧に映しとって紡ぎ出したこの公演、観応えがあった。

    次回公演を楽しみにしております。

    0

    2017/01/20 17:55

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大