酔いどれシューベルト 公演情報 劇団東京イボンヌ「酔いどれシューベルト」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    観応えがあった!
    「歌曲王」と言われ、生涯600曲ほど作曲したが、その曲が世に認められるまでの下積み生活が描かれる。劇団東京イボンヌはクラシック、演劇という独立したジャンルとは違い、その融合させるような公演スタイルである。その独特な公演はそれぞれのジャンルにおいて敷居が高いと思っている人々(観客)に楽しんでもらう、そんな試みを行っている。そこに描かれる世界...その描き方は、音楽曲だけでも、演劇の物語だけでもなく、主人公(本公演ではシューベルト)となる人物を通して見た人生、時代の背景・状況などを多重的に観せるところが魅力である。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、段差を設け、後方上手側(この劇団の特長、オーケストラをピットではなく舞台上に配置)に8人編成の楽団。下手側にピアノ(ピアニストは、音楽監督の小松真理女史)が置かれている。上手客席側は、バー・カウンターを作り物語の展開を促す場所としての役割を担う。舞台全体は焦げた平板を組み合わせたような壁・床で、その色彩は落ち着いた雰囲気を出している。そして、場面によって印象付を強調するため、照明を両方向から照らした際、両側の壁に役者の影が映り、妖(怪)しげな陰影(悪魔イメージ)が舞台上を被うようだ。

    梗概...シューベルトは恋人との結婚を望んでいるが、なかなか世に認められる曲が作れない。そんな悶々、苛立ちの中にある。一方、恋人は家族(父の医療費、妹達の生活費)のために心ならずも金持ちバロンへ嫁ぐことを決心する。シューベルトの落胆と恨み、そんな時、酒場に悪魔が現れ、美しい曲をプレゼントする代わりにシューベルトの寿命(1カ月)を縮めるという。悪魔の誘いに乗り、多くの名曲を残したが...。寿命があと1カ月になった時、恋人の真心を知り、また自分自身による作曲でないことへの絶望が切ない。

    さて、もともと悪魔などは存在せず、自分の心に巣くうもの。恋人はシューベルトのため神に祈っていたが、その行為こそ神との対話であるという。神も悪魔も自分の心の中。今まで作曲したものは全て自分の力であり、まさに命を削った結晶である。

    時代との関連というか...バロン(この名前から意識していることは明らか)とハプスブルク家を登場させ、金の力で名誉(男爵)が買える、貴族階級という身分制度への批判が垣間見える。音楽への純粋な取組姿勢との関係から見た時、別の意味で悪魔との取引(金の力ではないが)は苦悩と悔悟が付き纏う。ラストシーンは余韻の残る見事なもの。後世に名曲を残し、夭折したがその人生は充実したものではなかっただろうか。

    音楽...シューベルトということもあり、柔らかく優しい作品、またはパートを選曲しており、そのテンポは物語にマッチしていたと思う。先にも記したが、作曲家自身を題材にしているが、当然その作曲した音楽を演奏することになる。その意味で選曲と楽団編成が重要になっているが、本公演は声楽との調整・調和から8人編成もうなずける。

    最後に劇団東京イボンヌは、小劇場公演の活性化を目指しているという。東京を中心とした大都市圏だけの公演ではなく、条件があえば地方公演など演劇の底上げを期待したい。それこそ劇場に足を運んで、演劇・声楽・器楽の融合によって生の臨場感が楽しめるのだから。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/11/18 23:51

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